2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530322
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
渡邊 登 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50250395)
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Keywords | 住民投票 / 市民社会 / 公共圏 / 政治的機会構造 / 政治文化 / social capital |
Research Abstract |
住民投票という手段で問題の一定程度の決着をみた日韓の問題解決型行動の比較分析で明確になったことは、政治的機会構造の開放性/閉鎖性という軸で見る限り、住民意思表出の制度的機会は両国において極めて限定的であったことである。しかし、韓国においては(この問題もその契機の一つとなって)住民投票法が成立したことは開放性の程度を高める契機を獲得したと見ることもできる。他方で日本においては、依然として住民投票の法制化には指摘しないように極めて慎重である。ただ、巻町の住民投票施行以降、少なくとも地域社会のレベルでは住民の意思表明の手段として、その正当性を獲得しつつある。つまり、地域社会では住民意思に対する応答性の程度は高まりつつあるように思われる。しかし、今回の巻町の事例で明らかなように、日本の場合は原発政策という国レベルの政策決定の問題が地域社会の立地問題と矮小化(地域社会の意思決定問題に限定化)され、環境政策の変更を含めた政策決定が国民に開かれた場で議論される機会が存在しない。このように、政治的機会構造の国レベル応答性の程度という面では日本は低い。他方、韓国では世論の強い支持を背景に全国レベルの市民団体の影響力が強く、とりわけ盧武鉉政権では市民運動団体リーダーが「大統領府や政府機関の指導部に大挙登用された」(朴元淳)ように、政策決定システムへの参画が現実に行われており、応答性の程度は非常に高い。この権力構造の流動性(人材のフレキシビリティ)は欧米型とも言える。日本で着目すべきは、浸透しつつある「新しい政治文化」型と「(新しい政治文化との)折り合い型政治文化」型の共存関係で構成される日本型市民社会が今度どのようなモデルに発展しうるのかということであろう。地域レベルに限定的なこのモデルが全国レベルではどのような展開可能性をもつのかは本調査研究では今だ十分な議論が出来なかった。また、扶安での自主管理の住民投票実施が地域社会でのsocial capitalの構築にどのような影響を及ぼすのか-巻町のように複合型政治文化が成立し、それを基盤にしたsocial capitalが成立しうるのか、そしてそうであるとしたら、それは現在の「トップダウン型」市民社会とどのようにきり結ぶか等、今後の重要な課題である。
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