2003 Fiscal Year Annual Research Report
イタイイタイ病およびカドミウム中毒問題の被害・加害構造に関する環境社会学的研究
Project/Area Number |
15530330
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
渡辺 伸一 奈良教育大学, 教育学部, 助教授 (70270139)
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Keywords | イタイイタイ病 / カドミウム中毒 / 腎臓障害 / 神通川 / 安中 / 環境省 |
Research Abstract |
(1)環境省は1976年からイタイイタイ病とカドミウム中毒に関する医学研究班を組織し、20年以上に亘り調査研究を進めてきた。この過程で、多くの班員が、(1)富山以外でのイ病の存在を明らかにし、(2)イ病の前駆症状たる腎臓障害を、公害病で認定すべき、との見解に至っている。が、研究班の総括会議及び環境省は、未だに結論を出していない。そこで、本研究では、行政委託による医学研究が機能不全に陥っている原因を解明すべく、環境省研究班のメンバーに対する聞き取り実施した。今回実施したのは、富山医科薬科大学と千葉大学医学部の研究者であり、研究班会議での班員相互の実際上のやり取り、研究班組織における権限の配分状況、組織内意志決定の仕組み、研究の取りまとめ段階での環境省の意志の反映の有無等について、有意義な知見が蓄積できた。 (2)富山県神通川流域と群馬県安中市においてカドミウム中毒患者への健康対策の歴史と現状の把握、及び患者の被害構造を解明すべく、各種会議、工場立入調査に参加するとともに、フィールドワークを実施した。富山イ病では、被害者が認定申請する際に、水俣病の認定申請とは異なる方式を採用しており、その結果、被害者が申請に際し、躊躇しなくて済むようなシステムがあることが見いだされた。また、安中においては、汚染地の復元の遅延理由について、関係者の多様な意見を集めることができた。これと平行してカドミウムの人体影響に関する最新の論文を国の内外を問わず入手し、さらに次回から実施する石川県、兵庫県、秋田県のカドミ汚染地に関する基本的な資料を収集した。
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