2005 Fiscal Year Annual Research Report
公共空間の秩序化の社会史〜街頭における監視システムの展開と問題点〜
Project/Area Number |
15530355
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
永井 良和 関西大学, 社会学部, 教授 (40207973)
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Keywords | 公共の秩序 / 監視 / 監視カメラ / 学校の安全 / 個人情報 / 街頭犯罪 / ゲーテッド・コミュニティ |
Research Abstract |
平成17年度は、平成16年度までに実施した国内における街頭監視システムに関する資料の収集を継続し、その整理を行なった。とくに、各自治体が制定した生活安全条例をはじめとした法令の条文の分析、商店街や学校に導入された監視システムの実例研究などを追加した。従来の作業である、専門雑誌のバックナンバーの記事検索および収集、一般の単行本・新聞雑誌記事の検索および収集も継続的に実施した。 これらの情報を集約し、作成作業中の<公共空間の秩序化過程に関する年表>の完成をめざし、監視カメラや防犯システム、個人認証システムなどの技術的進歩を跡づける作業を、平成18年度中に完了する予定である。 現代社会では、偶発的な事件事故がきっかけとなり、人びとの「不安」が煽られることが少なくない。そのような状況のもとで、地方自治体が予算を組んで「安全・安心」をキーワードとした「まちづくり」などの施策に向かっている。また、従来は国家権力と結びつけて考察・批判されることが多かった現象が、個人あるいは家族、地域、民間企業などの集団レベルにおいて取り組むべき課題として認識されている。この数年間では、自治体などの補助を受け商店街が監視カメラを核とした防犯システムを導入し、また個人住宅においていも「タウン・セキュリティ」や「ゲーテッド・コミュニティ」を売り文句に掲げた商品の売り上げが好調である。また、小中学校においても、児童生徒に発信器やブザーを持たせ、登下校時の位置を把握するシステムを実験的に導入するなど、官民共同の技術開発がすすんでいる。 こういった動向が、これまでに収集整理した過去の歴史的経緯の文脈のなかで、「監視社会」化といいうる方向性を示しているのか、あるいは、別の性格づけや評価が必要な事態なのか。それを確定するのが、助成期間終了後に残された研究課題である。ただし、現在進行形の具体的施策の動向や社会実験の成果などを、今少し見極める必要があり、約1年間の期間をおいて、研究成果を公表できるかたちにする見通しである。
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