2003 Fiscal Year Annual Research Report
催眠と社会:19世紀フランスにおける精神医学的知識の教育分野への応用
Project/Area Number |
15530359
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
北垣 徹 西南学院大学, 文学部, 助教授 (50283669)
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Keywords | 催眠 / ヒステリー / ピエール・ジャネ / メスメリスム |
Research Abstract |
平成15年度は本研究の1年目に当たり、研究計画で示されたように、主に作業は一次文献資料の収集とその読解に当てられた。資料は、19世紀フランスの精神科医の著作(シャルコー、ベルネーム、ピエール・ジャネ、エドガール・ベリヨン等)を中心としたものであるが、それにとどまらず、同時代の進化思想にかんする著作(ダーウィン、ウォーレス、クレマンス・ロワイエ等)ら、教育学の著作(ビュイッソン、コンパイレ等)、哲学の著作(ルヌーヴィエ、フイエ、ヴァレリー等)など、多岐に及ぶ。読解はまだ、資料の全体にまでは至っていないが、進むべき方向はすでに明らかになっており、本研究2年目においても同様の作業が続けられるであろう。当時の精神医学の知の内部において、催眠の理論がヒステリー研究の枠内から出てきたことは、本研究前から分かっていたことであるが、それにとどまらず、多重人格症例の研究や、人格障害の研究とも関連があることが明らかになってきた。また精神医学の知の外部でも、催眠の理論は教育・衛生などの分野で、幅広い拡がりをもっていたことも、まだ全貌は明らかではないものの輪郭は浮かび上がってきた。他方で、催眠の理論が確立する前史として、いわゆる「動物磁気説(メスメリスム)」を参照することが、比較対照の点で重要であることも見えてきた。このような点を踏まえつつ、さらに発展的な知見を得るべく、2年目の研究は行われなければならない。 これまでのところ研究成果は、昨年秋の二つの学会(日本社会学会、精神医学史学会)において、それぞれで行った報告のなかで部分的に公表されている。前者の学会では主にガブリエル・タルド、後者の学会ではピエール・ジャネを取り上げた。これらはいずれも暫定的なものであり、本年度も引き続いて、これらの学会を通じて研究成果を公表していく予定である。またこれらの成果を論文にまとめていく作業も、今年度秋より開始するつもりである。
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