2006 Fiscal Year Annual Research Report
ハンセン病専門医に関する医療社会学的研究-その意味世界を中心として-
Project/Area Number |
15530362
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
蘭 由岐子 神戸市看護大学, 看護学部, 助教授 (50268827)
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Keywords | ハンセン病 / ハンセン病専門医 / 濃厚流行地 / 海外協力 / 回復者 / 支援 |
Research Abstract |
本年度は、日本の療養所を定年退官後、海外の濃厚流行地でハンセン病の疫学的・臨床学的研究をおこなっている医師をたずね、参与観察およびインタビューを行った。1年半まえに同行した疫学的フィールド調査から得た試料等がどのように分析・解析されて、ハンセン病研究および予防対策にいかされるのかがあきらかになった。具体的な実験室の作業についての観察と医師による実験の意図および分子生物学や血清学に関する知識の説明によってよりいっそう理解を深めることができた。また、実験の過程においてなにをあたりまえとしているのかを問うことで、実験的研究の知のあり方をさぐることができたので、今後のハンセン病に関する科学技術社会学的考察につなげていきたい。 また、濃厚流行地における現地医師の活動の一環として、ある地方都市のハンセン病専門病院とそこから退院した回復者のための職業訓練施設を見学した。職業訓練施設は、ミッショナリーの運営であったが、支援を受ける回復者たちに対しては、決して宗教的側面を強調しないように実践されていた。また、回復者の経済的、社会的地位をどのように回復するか、さらにはハンセン病をわずらうあいだに減じた自己尊重感をいかに回復させるかが、現地の医師にとって医学的治療以上のむずかしさをもっていることを知った。また、労働市場においてインフォーマル・セクターがあることが社会復帰をすすめるにあたって促進的な要因となることがわかった。 国内調査では、かつて療養所につとめていた医師にインタビューを行ったが、具体的なライフストーリーの聞き取りまではすすまなかった。医師はなぜみずからを語ることをしないのか、考察すべき課題として浮かび上がってきた。
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