Research Abstract |
この研究は,痴呆高齢者への生活支援サービスを対象に取り上げ,(1)生活主訴への各専門職の対応能力の実態,(2)対応能力における格差の形成に高い寄与率を有する要員の析出,(3)対応能力と職場組織・仕事管理のあり方との相関関係,(4)能力形成に有利な組織環境的要因のあり方,の4点を解明し,痴呆高齢者生活支援における最適なケアプロセスを能力組織論として構成することを日的にしている。この研究課題を達成するには,個々の専門職レベルでの対応能力と,組織的に発揮される対応能力との双方についての実態分析が求められるが,平成15年度には,前者の作業を実施した。具体的にはつぎのとおりである。 (1)痴呆高齢者の介護・生活支援の方法について,類型調査を実施した。調査の柱は,処遇理念・方針,「主訴」発見からケアプロセス編成までの方法,作業組織のあり方,各専門職のポジショニング,能力開発の仕組みなどであった。対象は,ユニット処遇を行っていない特別養護老人ホーム,ユニット処遇を行っているものの痴呆症の原因別・形態別ユニットではない特別養護老人ホーム,アルツハイマー型と脳血管障害型に区分し,歩行自立度をさらに考慮した類型別ユニット処遇を行っている介護老人保健施設,それに混合型グループホームとした。 (2)先端的処遇を展開しているとみなされる介護老人保健施について,能力の高さや暗黙的能力がとくに表現される代理指標的課業の析出を,ベテラン職員への聞き取り調査の方法で実施した。 (3)さらに,(2)を大量観察で確認するために,埼玉県介護支援専門員協会ならびに埼玉県介護福祉士会の協力を得て,組織会員に能力レベルと能力形成に関する書面調査を実施した。 (4)作業参与観察を通じて,各専門職の特徴ある能力の分析を実施した。対象となったのは,いずれも先端的処遇を展開しているとみなされる介護老人保健施設の2つの(アルツハイマー型・歩行自立と脳血管障害型・高度介助型)痴呆高齢者処遇ユニットと,2箇所のグループホームであった。
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