2005 Fiscal Year Annual Research Report
セルフヘルプグループの組織論的課題解明のためのストーリー及びメタファーの分析
Project/Area Number |
15530380
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡 知史 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50194329)
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Keywords | セルフヘルプグループ / 組織論 / メタファー / ストーリー / 難病 / 患者団体 / 自助 / ボランタリー団体 |
Research Abstract |
昨年度、米国の8つの難病児親の会のインタビュー調査を行なったが、本年度はそのデータの分析と、過去に収集した日本の難病児親の会のデータを再分析した。そして、その結果を本年度は2つの海外学会(単独発表1回と共同研究2回)と1つの国内学会で発表した。そこで明らかにした考察は以下の3点である。 (1)米国と日本ではセルフヘルプグループに対する社会調査はかなり異なる。それは社会調査が置かれている社会的な位置づけの違いによることと、集団の閉鎖性の違いによるものと考えられた。 (2)米国ではビジネスで用いられるメタファーが、一部のセルフヘルプグループでは用いられている。すなわち競争、合理化、資金等である。それは非営利団体の経営を専門とする非当事者が深く親の会活動にかかわっていることと関係している。 (3)日本の親の会で相談を受けるとき「注意深い楽天主義」というべき原則あるいは方針が意識的にあるいは無意識的に貫かれている場合がある。これは最悪の状態を想定して悲観的に応えがちと思われる専門職の相談のありかたと対照的かもしれない。 また、これは未だ学会等では発表していないが、米国の難病児親の会のインタビューなかで興味深いメタファーとストーリーが語られていた。それは「金銭」というメタファーと「成長」のストーリーである。日本であれば「組織の私物化」と「組織」自体を実態として捉え、それが不正利用されると表現されるものを、「金銭」の不正利用と表現されていた。米国では組織の欠点や弱点を率直に語るのではないかと予想したが、多くはそれは「過去に克服された欠点や弱点」として語られ、それが「乗り越えられた」という「成長」のストーリーの一部として語られるように思われた。
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