2003 Fiscal Year Annual Research Report
災害や不運の遭遇体験と危機対応行動に関する実験的研究
Project/Area Number |
15530401
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
釘原 直樹 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60153269)
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Keywords | 災害 / コントロール / 保険 / リスク / 被害発生確率 / ギャンブル |
Research Abstract |
不運に遭遇する頻度と1回当たりの被害の大きさ、それからコントロール可能性が行動(特に保険選択)にどのように影響するかについて実験的研究を行った。被験者はパソコンの中のスロットマシンを操作した。同じ絵柄が3っ揃った場合は災害発生を意味する。コントロール可能性とその対象に関する条件として次の4つを設定した。1.自分が自分のスロットをコントロールしていると思っている場合(独立条件)。2.他者が自分のスロットをコントロールしている場合(依存条件)。3.自分が全員のスロットをコントロールしている場合(支配条件)。4.他者が自分のスロットをコントロールし、自分が他者のスロットをコントロールする場合(相互依存条件)。保険の種類については掛け金が高く補償金も高いものから掛け金が低く補償金も低いものまで9種類が用意された。それらは全て掛け捨てとした。実験に対する自我関与を高めるために『知能と運動感覚および予測能力に関する実験』として説明した。スロットのアタリを被災と想定して、財産が減るようなプログラムを作成した。結果が悪ければ電気ショックを与えるという説明をし、同意を得た被験者にだけ電極をつけた。実際には電気ショックは与えなかった。スロットは、被験者の操作には関係なく一定の結果を示すようにプログラムされていた。1回の試行毎に主観的確率、保険の種類を記録した。全員が50回以上試行したところで終了した。実験の結果、独立条件で最も保険の掛け金が少なく、さらにリスク認知も低くなることが明らかになった。他者に運命を左右されたり、他者の運命を担っている場合はより強いリスク対応行動(より高額の保険に加入)をすることが明らかになった。さらに被害に遭遇する頻度は少ないが1回当たりの被害額が大きい場合の方が、逆の場合よりもコントロール可能性の影響を受けやすいことが明らかになった。これは自動車事故の危険度認知より航空機事故の危険度認知の方がコントロール可能性によって左右されやすいことを意味する。
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