2004 Fiscal Year Annual Research Report
災害や不運の遭遇体験と危機対応行動に関する実験的研究
Project/Area Number |
15530401
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
釘原 直樹 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60153269)
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Keywords | 災害 / コントロール / 保険 / リスク / 被害発生確率 / ギャンブル |
Research Abstract |
本年度も前年度に引き続いて不運に遭遇する頻度と1回当たりの被害の大きさ、それからコントロール可能性が行動(特に保険選択)にどのように影響するかについて実験的研究を行った。特に他者が自分の運命を担い、自分が他者の運命を担っている場合について詳しく分析した。この場合2種類の状況がある。第1は自分の運命をコントロールしている他者と、自分がコントロールする他者が同一人物の場合、第2はそれが異なる場合である。第1のケースは夫婦のような場合が考えられる。第2のケースは上司と部下の中間に位置する中間管理職のような立場である。すなわ当人が上司から統制され、当人は複数の部下の運命をコントロールする。被験者はパソコンの中のスロットマシンを操作した。同じ絵柄が3つ揃った場合は災害発生を意味する。保険の種類については掛け金が高く補償金も高いものから掛け金が低く補償金も低いものまで9種類が用意された。それらは全て掛け捨てとした。実験に対する自我関与を高めるために『知能と運動感覚および予測能力に関する実験』として説明した。スロットのアタリを被災と想定して、財産が減るようなプログラムを作成した。結果が悪ければ電気ショックを与えるという説明をし、同意を得た被験者にだけ電極をつけた。実際には電気ショックは与えなかった。スロットは、被験者の操作には関係なく一定の結果を示すようにプログラムされていた。1回の試行毎に主観的確率、保険の種類を記録した。全員が50回以上試行したところで終了した。実験の結果、第1の条件で保険の掛け金が多く、さらにリスク認知も高くなることが明らかになった。他者に運命を左右されたり、他者の運命を担っている場合はより強いリスク対応行動(より高額の保険に加入)をすることが明らかになった。しかし、上司部下の関係の場合、責任が上司に転嫁され、相対的にリスク認知が低くなることも示された。
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