2006 Fiscal Year Annual Research Report
災害や不運の遭遇体験と危機対応行動に関する実験的研究
Project/Area Number |
15530401
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
釘原 直樹 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60153269)
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Keywords | 死因 / バイアス / 接触回数 / 感情負荷 / 過大視 / 頻数認知 / ポジティブ語 |
Research Abstract |
これまでの研究で、稀な死因に関しては全体的に過大視され、一方ありふれた死因は過小視される傾向が見出された。また、話題性があったり、より強いインパクトをもつできごとに関しても、実際より多く見積もられることも明らかとなった。死因は感情負荷の極めて高い刺激であることが考えられる。このことから頻数認知に影響するものとして、刺激の感情価がありうる。この点に関して実験的研究は未だ行われていなかった。 本年度は(1)単語の提示回数の多さの違い、(2)感情負荷の有無、(3)感情負荷が肯定的か否定的か、によって人間の主観的回数評定が実際の提示回数とずれるかどうかを実験的に検証した。実験は感情負荷条件(ポジティブ語「幸福感」「信頼感」、ネガティブ語「火災死」「落雷死」、ニュートラル語建築物)「腕時計」)×頻度条件(高頻度500回、中頻度50回、低頻度5回)の組み合わせで行った。本実験における感情負荷語の提示は1回につき1000msとした。参加者は20分間で1110個の単語を連続して見ることになった。提示位置は、スクリーンの1ヶ所に固定せず、左上、左下、真ん中、右上、右下の5ヶ所に配置した。提示位置と定時順序について、提示位置と提示語のそれぞれに対し、乱数を割り当ててランダムに配置した。実験参加者には実験の目的を「法則の発見」と説明した。それは参加者の注意を「法則の発見」に向けることで、提示した単語の回数を正確にカウントされることを防ぐためであった。それから20分間注意を持続させるためでもあった。 分析の結果、全ての語において低頻度提示の場合は主観値と客観値の差が大きく、過大視されていた。逆に高頻度提示語は主観値と客観値の差が小さく、過小視される傾向が見られた。 それから感情負荷語(ポジティブ語、ネガティブ語)は中立語より歪みが大きくなることが低頻度と中頻度条件において見出された。ネガティブ語に関しては高頻度条件でも歪みがあることも確認された。これらの結果から刺激対象に対する接触頻度の判断にはバイアスがあることが実験的にも検証された。
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