2004 Fiscal Year Annual Research Report
高機能自閉症児における社会性障害の改善に関する研究
Project/Area Number |
15530431
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
神園 幸郎 琉球大学, 教育学部, 教授 (70149334)
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Keywords | 高機能自閉症児 / 自己制御 / 不自然な動作 / 身体図式 / 社会性障害 |
Research Abstract |
高機能自閉症児の社会性障害が、彼らに特有な自己制御機能から生成されるとの仮説に基づき、彼らが示す「不自然な動作」に着目して、その認知・社会的な背景要因を検討した。本年度は前年度に引き続き、対象とした2名の高機能自閉症児のうち、継続中のB児について観察資料の集積を行うとともに、すでに収録を終了したA児についても更なる分析を行った。A児については、既に指さし動作に焦点化した分析が終了している。それによれば、A児の指さし動作は、行動の制御機能に基づく時期区分ごとに明瞭な発達変化を示すことがわかった。この分析から、その妥当性が検証された制御の時期区分に基づいて、本年度はA児が示す「不自然な動作」の全般について検討を加えた。その結果、自閉症児が示す「不自然な動作」には、制御機能が関与しないものと、制御に依存するものがあることが判明した。制御に依存しない「不自然な動作」は、発達的な時期区分に関係なく一貫して出現していた。この動作は、従来、神経学的な背景のもとで論じられてきた現象と重なる特徴を持つが、神園(1988)が指摘した身体図式の未成立の枠組みで解釈できることが明白になった。一方、制御依存の「不自然な動作」は、制御機能の発達に伴う質的な変化によって大きく性質が異なった。他者制御期における「不自然な動作」は、他者の指示とそれに対応する動作の随伴性をなぞることで出現し、その不自然さは動作そのものではなく、動作が生起する文脈を背景にしたときに際立つものであった。自己制御期の「不自然な動作」は、規範やルールに合わせて自らの行動を制御しようとするがために結果として動作が不自然になってしまうタイプ1と、内的活動が脱文脈的に顕現化してしまうことで動作が不自然になるタイプ2の2種類が見出された。タイプ2はその出現率がタイプ1に比べて圧倒的に高く、高機能自閉症児の行動特性を如実に表していると推察された。
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