2005 Fiscal Year Annual Research Report
高機能自閉症児における社会性障害の改善に関する研究
Project/Area Number |
15530431
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
神園 幸郎 琉球大学, 教育学部, 教授 (70149334)
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Keywords | 高機能自閉症児 / ファンタジー / 愛着関係 / 社会性障害 / 共同注意 |
Research Abstract |
本年度は、高機能自閉症児の対人社会性を阻害し、社会性障害を重篤化する要因としてのファンタジーへの没入現象に着目して、その出現の契機を明らかにした。 一般に、自閉的ファンタジーは対人的な場面における不安や恐怖に対する自閉症児の防衛機制として出現するといわれている。つまり、ファンタジーに浸ることで外界との接触を遮断し、その結果、自己を防衛しているというのである。ところが、筆者の臨床経験によれば、対人的な不安や恐怖を喚起しがちな、いわゆる見知らぬ他者との接触場面においてはファンタジーへの没入は見られず、見知らぬ他者との愛着関係が構築され、見知らぬ他者が特定の他者となり、そして愛着対象として認識されるようになった段階で、ファンタジーへの没入現象が出現する傾向があった。このことを確かめるために、筆者は共同注意行動に着目して、高機能自閉症児と2名の大人の特定の他者との関係性を観察した。その結果、対象児の共同注意行動は関わりの初期には出現頻度が低く、その後セッションを重ねるにつれて次第に増加するものの、ある時点を頂点として減少に転じ、頂点に達するまでのセッション回数とほぼ等しい回数で関わりの初期の水準まで減少した。こうした傾向は、関わる相手が代わっても、同じ様相を示した。対象児と特定の他者との二者関係の分析から、共同注意行動の増加期は、対象児にとってまさに見知らぬ他者が特定の他者に変わり、その特定の他者への愛着を形成する時期と重なることが明らかになった。ところが、特定の他者を愛着対象とみなした関わりが成立してしばらくすると、対象児はファンタジーに浸ることが多くなり、結果として二者の関わりは次第に希薄になった。この結果は、自閉的ファンタジーが愛着関係を基盤とする対人関係の在り様によって規定されることを示しており、先述した筆者の臨床経験が実証的に確認された。
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