2003 Fiscal Year Annual Research Report
チョムスキー理論における完全解釈の原理を逸脱した文の文法性判断
Project/Area Number |
15530471
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
永田 博 岡山大学, 経済学部, 教授 (30093694)
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Keywords | 言語知識 / 文法性判断 / 完全解釈の原理 / 心理的実在性 / 二重目的語構文 / 日本語 |
Research Abstract |
Chomskyの完全解釈の原理を逸脱した日本語二重目的語構文(単文)を用いてこの原理の心理的実在性を検討した.その結果,母語話者の文法性判断はChomsky理論が予測する悉無律に従わず,種々の文型操作によって影響を受けることが判明した.この事実は,この理論が想定する母語話者の言語知識が実際の母語話者のそれと異なることを示唆する. 実験1(発表論文1) 文法的に正しい構文(例えば,総理が(S)各大臣に(D)指示を(O)与えた(V))における各項に不必要な項を追加して非文を作った.併せて,この追加項ともともとの項(以下,先置項)との関連性(追加項なし;追加項が先置項を限定・明示する;追加項と先置項が平行関係にある)を実験的に統制して,それぞれの文型に対する文法性判断を7段階評定で求めた.その緒果,(1)文法性判断は追加項のない文では高い判断値が得られたが,(2)非文の判断値は悉無律的になされす,文型操作によって違いが生じた.つまり,日本語話者はこの原理を逸脱した文を全くの非文として排斥することはなかった. 実験2(発表論文1) 目的格を2個含む点で完全解釈の原理を逸脱している文(例えば,「山下が戦後史を研究をしている」)を文法的な文(「山下が戦後史を研究している」)と比較した.その結果,非文の平均判断値は5を超え,文の判断値(6.68)との差が小さくなった. 実験3(発表論文2) 実験1の判断値を高めるため関連性要因の操作に修正を加えて同様の実験を行った.その結果,判断値は7段階評定で平均3レベルまで高まった.
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[Publications] Hiroshi Nagata: "Judgments of grammatically of Japanese sentences violating the Principle of Full Interpretation"Journal of Psycholinguistic Research. 32. 693-709 (2003)
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[Publications] Hiroshi Nagata: "Judgments of grammatically of sentences violating the Principle of Full Interpretation : A further exploration"Perceptual and Motor Skills. 97. 477-482 (2003)