2004 Fiscal Year Annual Research Report
市制町村制期における行政村の就学勧奨及び小学校運営に関する実証的研究
Project/Area Number |
15530485
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
谷 雅泰 福島大学, 人間発達文化学類, 助教授 (80261717)
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Keywords | 就学勧奨 / 就学率 / 行政村 |
Research Abstract |
1890年代から1900年代にかけて、行政村とその長、及び学事担当者の就学勧奨の動きを明らかにすることを目的とし、昨年度の青森県に続いて岐阜県と北海道について、調査を行った。具体的には福島大学附属図書館所蔵の資料と新しく収集した『岐阜県教育史』、『新札幌市史』により予備調査を行った後、現地で自治体史を中心に調査を行った。岐阜県はこの時期全国平均を若干上回る就学率であったが、その背景に地域の教育関係者の努力や工夫があったことが指摘されている。たとえば「父兄懇談会」や「参観札」によって保護者との連携をはかる事例、村長により就学の督促への強い姿勢が示され、入学願書に誓約させて、欠席児童が3階の督促を受けた場合には手数料を取る規則を制定した事例がそれである。また、北海道はこの時期他府県に比べて就学率は低く、特に貧困問題は他府県よりも切実であった。しかしその中でも就学率を向上させようとする努力が、特に都市部においては見受けられる。さて、これらの府県の実態を見ると、その背景にある社会的・経済的要因をどうみるかが大きな問題となる。特に日清・日露戦争による帝国主義的意識が、どのように就学率に影響を与えたのかが問題となる。その点、近代社会の成立による「国民化」をその時代を生きた人々の経験を軸に描こうとした大門正克など編『近代杜会を生きる』(吉川弘文館)に大きな示唆を受け、その視点に学ぶ必要を感じた。近代社会において帝国にふさわしいたとえば「強兵」の一員たるべく児童を教育しようという指向をもつことはもちろんだが、一方でひとりひとりの国民にとっては近代社会にふさわしくそこで成功するだけの力を身につけることが望まれるのは当然のことである。本研究では、就学督促やそれを受ける保護者の意識を腑分けして、そこに多様な側面を見ることをめざし、就学をめぐる言説の分析をはじめたところである。
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