2003 Fiscal Year Annual Research Report
道徳教育における公共性意識の形成に関する日独比較研究
Project/Area Number |
15530496
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
野平 慎二 富山大学, 教育学部, 助教授 (50243530)
|
Keywords | 公共性 / 道徳教育 / ドイツ / 国際情報交換 |
Research Abstract |
1.日独の公共性概念に関する文献資料の収集と分析 日本とドイツの公共性概念に関する文献を、特に思想的、社会学的な分野を中心に収集した。それをもとに、双方の概念を分析・整理し、次のような結果を得ることができた。 (1)日本では伝統的に、政治体への帰属意識、ならびに世間への帰属意識という二点が公共性概念の特徴であるのに対し、ドイツでは、自律的な教養市民層の自由な活動空間がその基礎にある。 (2)日独ともに、第二次世界大戦後、個人主義的な意識が拡大している。同時に、個人主義を基礎にした社会参加の動きも生じつつある。 2.日独の学校教育における公共性意識形成についての予備的調査 日本とドイツの小・中学校段階において、明示的あるいは潜在的に、どのような公共性意識が形成されているかを調べるため、予備的な調査を行った。学習指導要領の検討や教員へのインタビューなどを通して次のような結論を得ることができた。 1(1)日本では「社会性の形成」と「個人の自律」が別々に考えられているのに対し、ドイツでは、「個人を基礎とした社会規範」という考えが一般的である。 (2)日本では、規則や規範は所与であり変更しがたいと捉えられる傾向があるのに対し、ドイツでは一般に、規則は個々人相互の関係を規制する最低限の取り決めと捉えられている。 次年度は、以上のような暫定的な結果をより精緻に規定するとともに、それを踏まえて、討議を中心とする公共性意識形成論の可能性について考察する予定である。
|