2005 Fiscal Year Annual Research Report
「プロセスレコード」による教育実習生及び熟練教師の自己解釈に関する基礎的研究
Project/Area Number |
15530498
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
山口 恒夫 信州大学, 教育学部, 教授 (60115384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越智 康詞 信州大学, 教育学部, 助教授 (80242105)
村瀬 公胤 信州大学, 教育学部, 講師 (20361602)
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Keywords | 教育実習 / 臨床経験 / 臨床能力 / プロセスレコード / リフレクション / 反省的実践 / 言語行為 / ケース・メソッド |
Research Abstract |
本研究プロジェクトの3年目(最終年度)である平成17年度は、過年度(平成15〜16年度)までの研究成果を踏まえ、主として1.「基礎教育実習」を履修した教育学部学生(280名)の協力を得て「プロセスレコード」による臨床経験のリフレクションを「教育実習事前・事後指導」の機会に行うことにより、教育現場における体験的学修の省察の深化を図り、2.「10年経験者研修」の機会を用いて、公立学校に勤務する熟練教師に「プロセスレコード」の作成を依頼し、教育実習生と熟練教師とのリフレクションの質の差異を析出することを目指し、これらを踏まえて、3.教育実習生及び熟練教師の「プロセスレコード」の分析を通して、教師の臨床能力形成モデルの作成を行った。 1.教育実習生による「プロセスレコード」の作成とその評価 基礎教育実習期間(4週間)の内の1週後及び4週後の2回、実習生全員に「プロセスレコード」の提出を依頼するとともに、各クラスに配属された実習生相互によるディスカッションによる相互評価を行った。また、[プロセスレコード」による省察と「リフレクション・シート」(米国INTASC準拠)等との対比において、各種のリフレクションに対する学生の評価を質問紙法により行い、その結果を分析した。その結果、体験的学修を省察する方法として、「プロセスレコード」は概して高い評価を得るとともに、教育実習生のような「初心者」がどのような場面で戸惑いや困難を感じるのかが明らかになった。 2.「10年経験者研修」に参加した熟練教師による「プロセスレコード」の作成 長野市の「10年経験者研修」に参加した公立学校教師(「道徳」講座受講者)に「プロセスレコード」の作成を前もって依頼した。その結果、熟練教師にとって、日常的に用いられるリフレクションや授業研究の手法との違いに戸惑いが見られた。とくに、「プロセスレコード」記入にあたり、「事実」と「判断・解釈・評価」を区分けすることが、教育実習生に比して、熟練教師の方が困難であるという所見が得られた(ただし、事例数が少ないので今後更なる検証が必要である)。 3.「プロセスレコード」の作成を通して見た教師の臨床能力の形成 本研究プロジェクトを通じて、看護教育、とりわけ「精神科看護実習」の手法として発展してきた「プロセスレコード」は、教育実習等の教員養成に関わる臨床経験においても、リフレクションの方法として有効であることがさまざまなエビデンスに基づいて立証された。とくに、教師の臨床能力の形成において、従来軽視されがちであった、観察者、状況への参与者、実践者としてのそれぞれのまなざしを「プロセスレコード」作成を通してつぶさに区分けすることの重要性があらためて明確になった。
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Research Products
(4 results)