2004 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツにおける「学校プログラム」政策の進展と「機会均等」原則の今日的意義
Project/Area Number |
15530516
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
前原 健二 東京電機大学, 理工学部, 助教授 (40222286)
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Keywords | ドイツの教育 / 中等学校 / 学校プログラム / 教育の機会均等 / 学校の自律性 / PISA調査 / 勤務評定 |
Research Abstract |
平成15年度から平成17年度まで3カ年間の研究計画の第二年度に当たる本年は、中等教育制度改革との関連において「学校プログラム」政策に与えられている意味付けの整理・検討を主な課題とした。本研究課題に関わって2編の研究論文を執筆(うち1編は2005年3月時点で校了・未公刊、近刊予定)、1件の学会発表により成果を公表した。また現代ドイツにおける「学校プログラム」政策と「機会均等」原則の関係および学校制度改革の展望について、さらに2本の論文を執筆中であり、2005年度中に公表する予定である。 本年度明らかにしてきたのは次のような点である。学校の自律性を高める施策としての「学校プログラム」政策は、教育課程、人事、財務の三つの観点から検討される必要があるが、教育の「機会均等」あるいは地域全体の教育的達成という面では看過することのできないデメリットも生まれている。PISA2000(OECDによる国際学力比較調査)が明らかにしたように、ドイツの中等教育の特徴は全体として学力水準が低く、また学校制度の社会的選別性が際立って高いということである。学校単位の自律性の強化は確かに教育現場の必要に即した創造と改善を可能にするであろうが、中等教育段階における選択・選別を制度的前提とするドイツにおいては、むしろ学校種ないし各学校を単位とした社会的選別性が強化されるという効果も生じる。こうした文脈において、「機会均等」の意味および中等学校制度のあり方についての政治的・教育学的議論が再び始まっており、そこでは特に歴史的前提としての196-70年代の同種の議論の昂揚と退潮を踏まえた、新しい論点と論証が求められていることを示した。また、校長の権限の拡大強化に伴う「教員の勤務評定」の現状と方向性については、単なる市場原理的・経営論的な面だけでなく、教育学的・専門的な面も持っていることを示した。
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