2004 Fiscal Year Annual Research Report
フランス第三共和制における新自由主義と義務教育法制の研究
Project/Area Number |
15530522
|
Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
高津 芳則 大阪経済大学, 人間科学部, 教授 (90206772)
|
Keywords | 新自由主義 / フランス / 義務教育 / 第三共和制 / 公民教育 / レオン・デュギー / 国歌 / コンドルセ |
Research Abstract |
19世紀新自由主義は、自由放任主義を放棄し、国家干渉を前提として自由主義を擁護する。このもとで、義務教育制度が成立する。ところが20世紀新自由主義は、この19世紀新自由主義を再び逆転させ、資本主義の力をむきだしの形で発揮させることが、その役割となる。その意味では、20世紀新自由主義は、18世紀自由主義への先祖帰りである。では、義務教育制度は、20世紀新自由主義において解体の対象になるのであろうか。少なくとも、国民教育制度のもつ人権保障的側面、福祉国家的側面は、縮小の対象になるだろうが、しかし制度の解体あるいは否定まではいかない。フランス第3共和制で確立する義務教育制度は、フランス革命期の公教育理念の実現、教育人権の保障の制度ではない。公法学者レオン・デュギーは、フランス革命期のコンドルセ・プランのなかで、初等教育への国家関与に注目する。デュギーは、ここから義務教育の正当化を導く。それは、初等教育(大衆教化教育)と中等・高等教育(エリート教育)の断絶を前提としていた。20世紀には義務教育年限の延長、中等・高等教育の大衆化が実現する。それと共に、公民(市民)科も、コレージュ、リセへと拡大されていく。2005年議会に提出された教育改革法案の審議の過程で、国民議会議員ジェローム・リビエール議員(UMP所属)が、国歌の学習を小学校で義務づける修正案を提出した(2月)。それは可決成立すると見られており、現代でも、義務教育の大衆教化の重要性は失われていない。
|
Research Products
(2 results)