2003 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期日本における公立中等学校の「昇格」問題-特に女子中等教育機関の設置者変更過程に注目して-
Project/Area Number |
15530523
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
大谷 奨 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (70223857)
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Keywords | 中等教育 / 中学校(旧制) / 実業学校 / 高等女学校 / 設置者 / 教育財政 / 教育行政 / 教育政策 |
Research Abstract |
本研究は昭和戦前期の市町村立「義務教育後」教育機関が道庁府県立へと設置者変更されている事例を分析し、学校施設の水準、教員資格などの変更認可の条件、変更に要する市町村の財政的負担とその処理方法、これらを克服していった地域住民の変更動機を明らかにしようとするものである。 今年度の研究成果は以下の通りである。 1.設置者変更認可文書を渉猟し、国立公文書館の文部省移管文書から本研究に関わる行政文書の検索を行った。また事例的な検討を行うため、さしあたって今年度は北海道内に設立された高等女学校の設置者変更認可文書を詳細に検討することとし、公文書館文書から必要部分の複写を行った。 2.同時に、当時は道庁立への移管は地域住民には「昇格」としてとらえられていたことから、その「昇格」過程に関する地域住民の動向を当時の新聞記事から探った。 3.その結果、多くの事例は(市町村立女子職業学校→)市町村立実科高等女学校→本科への変更→道庁立移管という一連の流れで共通しており、またそれぞれの組織変更、設置者変更の理由書からは、市町村が当初から本科化、設置者変更を見込んで最初の女子教育機関の設置を行っていたこと、そして道庁もそれを暗に支援するような指導行政を行っていること、その結果ほぼ完全に整備された本科高等女学校に仕上げてから設置者移管をおこなうことで、道庁は設立の初期費用無しに道立学校を入手できたことが明らかとなった。この経緯については、関西教育行政学会において口頭発表を行った。 このように市町村に学校を設立させ、さらにそれをほぼ完全に整備させてから道庁が設置者変更に応じる、という方法を大正期まで頻繁に確認された自賄主義(道立学校設置費用を地域住民に負担させる財源捻出方法)の応用態ととらえ、研究対象を中学校、実業学校にまで広げて次年度以降確認してゆく。
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