2003 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける学校評価の組織・構造に関する実証的研究
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15530527
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
芫妻 紳二郎 九州産業大学, 国際文化学部, 助教授 (20205339)
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Keywords | 学校評価 / インスペクター / OFSTED / 教員評価 / パフォーマンス・マネジメント |
Research Abstract |
平成15年度は学校評価に関する諸資料の分析及びイギリス国内の実地調査に基づき、現段階における学校評価システムの特徴について以下のような知見を得た。 1.今日のイギリス教育政策は、需要と供給の経済上の原則を教育行政にも適用し、自由競争原理肯定する立場である。この立場にあるインスペクターと学校、教師との間には緊張関係がみられるものの、学校評価の成否は個人的資質に負うところが大きい。この意味で19世紀に経験した出来高払い体制における学校査察の実際と性格的に似通った部分が看取される。 2.第三者機関(OFSTED)による学校評価を契機にして、学校改善への自覚的な取り組みが根付きつつある傾向にある。一般に、OFSTEDによる学校評価は否定的に語られる場合が多いが、2003年9月に新しく導入された指針で「公年と信頼」が強調され、学校がもつ長所を積極的に評価しようとする姿勢がみられること、そして第三者による学校評価に対して支持的イメージが形成されつつあり、それに基づく学校の自律性の醸成が認められる。 3.学校の自己評価の一環としての教員評価に取り組む総合制中等学校の事例をもとに、パフォーマンス・マネジメントの実際を分析した結果、個別の授業観察票でも長所の発見と協議、改善目標の明確化に重点が置かれていることが明らかになった。 4.新しいナショナル・カリキュラムに依拠した「学習計画」と「達成目標」の具体例によれば、わが国の教務主任の役割と重なるところが多いキー・ステージ責任者(key stage coordinator)の役割が学力水準の維持と向上にむけての啓発に大きく傾斜したものとなっていることが認められた。
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