2004 Fiscal Year Annual Research Report
ラテンアメリカにおける教育改革と国際教育協力に関する総合的研究
Project/Area Number |
15530552
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
江原 裕美 帝京大学, 法学部, 助教授 (40232970)
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Keywords | 初等教育改革 / 地方分権化 / 学校自律性 / 教育協力 |
Research Abstract |
今年度は、ブラジルの初等教育改革を中心にその政策と実施状況についてこれまでわかっている範囲について論文を書いた。同時に、それらに直接間接的に影響を及ぼしている国際教育協力に関して、これを行う側での政策とプロジェクトに関してワシントンDCに海外調査を行った。それらの成果の一部は所属大学の研究紀要と日本比較教育学会の研究紀要に掲載予定である。その内容は概略以下の通りである。 まず、ブラジルの初等教育は現在大規模な改革の過程にあり、教育制度、学校経営などに多面的な改革が導入されている。教育制度の面では、教育財政の仕組みを大きく変える「初等教育維持振興および教職向上基金」が開始されてから数年が経過している現時点で、州立学校の生徒数が減少する反面、市立学校の生徒数が大幅に拡大している。これと同時に初等教育の運営全般を市などの地方自治体が管理する地方分権化の試みも開始されている。 また、学校組織そのものの強化を図り、学校自律性を高める改革が各地で行われている。ブラジルの北東部と北部、中西部では教育省と世界銀行とによる学校強化プログラムが行われているほか、各州において様々なアプローチが行われていることが判明した。 他方、ラテンアメリカの国際教育協力は、言語や文化の共通性に基づく広範な地域交流・協力のうえに展開されていることは重要である。今年度は重要な地域協力の概略を報告するほか、この地域でプレゼンスの高い、世界銀行、米州開発銀行、USAIDの国際教育協力について、政策の重要指針と現在のプロジェクトや融資の活動について調べた。世界銀行は90年代に入り教育への融資を増加させているが、ラテンアメリカに対しては知識経済への移行を視野において高度な技能知識を有する人材の養成を提唱しているが、教育融資・技術協力の実績としては、初等教育のシェアが大きい。米州開発銀行では対象を中等以上の教育段階にしており、職業訓練も含む多様なプロジェクトを実施すると共に、中等教育の機会の増加に取り組む方向にある。USAIDはきめ細かい協力を各国で行っているが、その関心や分布の実際は、アメリカ合衆国の外交戦略的関心に沿った形となっている。その上でブラジルを例に取り、それらのプロジェクトが各国の教育政策の重要な部分を担うと同時に、協力機関の関心に沿ったものとなっていることを報告した。 これらの研究から、ラテンアメリカにおける教育改革は国際教育協力との関係を視野に入れつつ、今後も進めていくべきであることが明らかとなった。
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