2003 Fiscal Year Annual Research Report
岩手県の民俗芸能と学校教育〜中野七頭舞と剣舞を中心として〜
Project/Area Number |
15530561
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
島崎 篤子 岩手大学, 教育学部, 教授 (30322960)
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Keywords | 民族芸能 / 中野七頭舞 / 七ツ舞 |
Research Abstract |
平成15年度は主に中野七頭舞と学校教育との関連に着目し、本芸能を伝承している岩手県下閉伊郡岩泉町の岩泉町立小本小学校でのフィールドワーク(平成15年11月、平成16年2月)を中心に研究を行った。かつて中野七頭舞だけを伝承していた小本小学校は、近隣の学校を吸収・統合したことにより、中野七頭舞の他に中島七ツ舞、中里七ツ舞という3つの七頭舞の伝承を余儀なくされた。このうち中里七ツ舞は、平成15年度に小本小学校に吸収されたばかりである。数年前に統合された中島地区同様、中里地域の芸能である中里七ツ舞はそのまま伝承されることになった。この他、小本小学校の大牛内分校では大牛内七頭舞を伝承しているため、4つの七頭舞が小本小学校に関係している事実を把握することができた。しかし中野七頭舞は、大人の保存会の予備軍として伝承の意味をもち、一方、中島七ツ舞、中里七ツ舞、大牛内七頭舞は、子どもの伝承芸能として大切に育成されていた。まさに全く違う性格の七頭舞(七ツもの)が一つの学校に伝承されているという複雑な事実がみられた。小本小学校では、いずれの芸能も地区ごとに大切に育む場を提供するという立場から、毎年2月には保護者の方々を招いて、4つの七頭舞発表会を実施している。平成15年度は平成16年2月7日に行われたが、この取材を通して、本研究では4つの七頭舞を研究対象とする必要性を痛感させられた。 また小本小学校の外にも、現在北沿岸地域のみに残っている廻り神楽の取材を行うことができた。黒森神楽では各集落の宿に入る前に舞い込みにシットギジシを舞う。中野七頭舞の源といわれるシットギジシを生で取材できたことは本年度の大きな成果であった。 中野七頭舞は多くの民舞団体や研究者に注目された過去があり、今では研究者とかかわることを極端に嫌い、現在、中野七頭舞の保存会会長の協力は全く得られない状況である。しかしフィールドワーク実施上の困難を克服しつつ、4つの七頭舞に対象を広げながら今後も研究を継続していきたい。
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