2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530589
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
棚橋 尚子 奈良教育大学, 教育学部, 助教授 (20272271)
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Keywords | ルビ / 交ぜ書き / 学習負担 |
Research Abstract |
本年度は研究のまとめの年次であり、ルビの有効性について、次の2つの調査から明らかにした。 1.実験群と対象群との比較調査によるルビの有効性の解明 奈良、大阪、兵庫の小学校3年生〜6年生を対象にルビが漢字習得に及ぼす影響を調査した。調査方法は、以下の通りである。 (1)調査に先立ち、「モチモチの木(光村図書教科書3年生教材)」、「ごんぎつね(同4年生教材)」、「大造じいさんとガン(同5年生教材)」、「海の命(同6年生教材)」の教材文のうち、平仮名書きの10語をルビ付き表記にしたテキストを作成した。実験群の学習者たちには教科書本文のかわりに本テキストを与え、普段通りの学習をさせ、対象群の学習者たちには教科書で学習させた。 (2)(1)でルビ付き漢字表記にした10語の熟語について、両群の学習者に読み、書きのテストをした。 テストの結果、読み、書きともにルビの効果が確認された。しかしながら、特定の学級で成果に傾向がみられるなどの実態があり、ほかの諸条件(学級のある児童の氏名が調査語彙に含まれないことの徹底など)の統一をはかる必要があると感じられた。 2.教師に対するアンケートによるルビの有効性の解明 日本国語教育学会の会員名簿から無作為に抽出した250名の教師を対象に漢字ルビの有効性についてアンケートを行った。回収率は約40パーセントである。多くの教師が読みについてはルビの有効性を認めていることが理解できた。また、学力不振の子どもたちへの効果を指摘する声も少なくなかった。経験的な思いではあるが、長年子どもたちに接している教師の意見は尊重できるものだと考える。 調査方法などに課題を残してはいるが、以上の分析から、漢字ルビは漢字習得(特に読み)に関して一定の効果を有することを導いた。
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