Research Abstract |
本研究の目的は,大域体上の旗多様体に付随して定義される基本Hermite定数の詳しい解析である.今年度の研究で得られた成果は次の二つである. 1 Kを大域体,K上中心的な有限次元の斜体D上のn次元ベクトル空間Vから,Grassman多様体の捻れ形式としてSeveri-Brauer多様体Xが定義される.このとき,VおよびX上には,被数ノルムを用いて正の実数に値を取る高さ(height)H:V→Rを自然に定義することができ,その高さについてMinkowskiの第2定理の拡張が成り立つことを証明した.即ち,Vの中にD上の基底x_1,x_2,...,x_nで,不等式H(x_1)H(x_2)…H(x_n)≦γ(X)を満たすものが存在すること示した.ここでγ(X)はXのHermite定数である.また同様の不等式が斜体ではなく,K上の中心的単純多元環上の自由加群でも成り立つことを示した.Kが代数体でD=Kの場合には,これはVaalerによるMinkowski第2定理の定式化と一致する. 2 二つめの成果は大域体KのHermite-Rankin定数の新しい特徴付けである.K上のN次元ベクトル空間の中のn次元部分空間の成すGrassman多様体をGr(N,n;K)とし,一つのn次元部分空間Xを固定したときに,Xの中のm次元部分空間の成すGrassman多様体をGr(X,m)とする.このとき,Grassman多様体上の捻れ高さH_gを使って,〓(g)=sup_X inf_Y(H_g(Y)H_g(X)^(-m/n))とアデール群GL_N(A)上の正値関数を定義する.ここでXはGr(N,n;K)全体を動き,YはGr(X,m)を動くものとする.このとき,〓(g)の上限についてsup_g(〓(g)^2)=γ(Gr(n,m;K))が成り立つことを示した.ここでγ(Gr(n,m;K))はKのHermite-Rankin定数を表す.実際には〓(g)は定数関数で,〓(g)^2=γ(Gr(n,m;K))が成り立つことが予想されるが,これは未だ証明できていない.
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