2003 Fiscal Year Annual Research Report
構造化固体群動態モデルの数学的理論とその応用に関する研究
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15540108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 寿 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (80282531)
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Keywords | 構造化個体群モデル / HIV / AIDSの流行モデル / シャガス病 / 感染症流行モデル / テンポ調整出生率 / 後退分岐 / 基本再生産数 |
Research Abstract |
[1]HIV/AIDSの流行に関する年齢と感染持続時間をパラメータとする構造化人口モデルの開発をおこなった。年齢構造をもつ同性集団への侵入条件を与える基本再生産数が正値積分作用素のスペクトル半径で与えられることを示し、エンデミックな定常解の存在条件、一意性の条件を与えた。また感染力の形態によっては、定常解の後退分岐が現れ、複数のエンデミックな定常解が存在しうることを示した。さらにリアプノフーシュミットタイプの議論によって分岐解の安定性条件を明らかにした。 [2]中南米における主要な感染症のひとつであるシャガス病(アメリカトリパノソーマ病)に関して、感染持続時間依存性をもつモデルを開発して、定常解の分岐と安定性を検討し、パラメータの変化によって後退分岐が出現することを示した。これは基本再生産数が1以下でも流行が起こりえることを示しており、感染症予防を考える上で重要なポイントである。さらにこのような後退分岐の発生は、ホスト個体群の感染による死亡率上昇に起因することを明らかにした。またエンデミックな解の安定性の条件を明らかにした。 [3]近年、人口学においてボンガーツとフィーニーによって導入されたテンポ調整出生率に関して批判が相次いでいるが、我々はテンポ調整出生率を数学的に検討して、それが非常に特殊な仮定のもとで導かれたものであることを明らかにして、その限界を指摘した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Inaba, H.Sekine: "A mathematical model for Chagas disease with infection-age-dependent infectivity."Mathematical Biosciences. (in press).
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[Publications] 稲葉 寿: "インフルエンザ流行一数理モデル"綜合臨牀. 62(10). 2700-2706 (2003)
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[Publications] H.Inaba: "Backward bifurcation in a HIV/AIDS epidemic model with age structure I : The case of proportionate mixing."「関数方程式と数理モデル」数理解析研究所講究録. 1309. 189-196 (2003)
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[Publications] H.Inaba: "Resolving a confusion in the Bongaarts and Feeney's tempo-adjusted total fertility rate."人口学研究. 32. 1-7 (2003)
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[Publications] H.Inaba: "Backward bifurcation in a model for vector transmission disease."Morphogenesis and Pattern Formation in Biological Systems, T.Sekimura, S.Noji, N.Ueno and P.K.Maini(eds.), Springer. 271-279 (2003)
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[Publications] H.Inaba: "Backward bifurcation in a HIV/AIDS epidemic model with age structure II : The case of general transmission rate."「経済の数理解析」数理解析研究所講究録. 1337. 103-111 (2003)