Research Abstract |
本研究では,自由界面を有する2流体問題に対して,界面でのフラックスが0となる制約条件をラグランジュ未定乗数法の枠組みで取り入れた新しい混合型変分定式化に基づく新しい有限要素スキームを提案し,変分定式化の数学的正当性,定常問題の近似問題の可解性および誤差評価について考察を行った.その結果,ラグランジュ乗数技法によるフラックス・フリー変分問題は少なくとも一つ解(u,p,λ)を持ち,さらに(u,p)は通常のNavier-Stokes方程式に対する変分問題の解に一致することが示された.なお,(u,p)が滑らかであればラグランジュ乗数は0であることも示された.また,定常問題の近似問題に対しては速度および圧力に対する有限要素空間がinf-sup条件および或る種の補助的条件の下で,一意可解性が示された.また,近似解の誤差評価についてはメッシュサイズhに依存する定数を持つタイプの評価式とhに依存しないタイプの評価式を得られた.また,後者の評価式におけるラグランジュ乗数の絶対値は,連続問題と(フラックス・フリー)近似問題との"ずれ"に対する評価と理解することも可能である.本手法の有郊性を検証するために,ダムブレイク問題,スロッシングタンク問題等について,Navier-Stokes方程式および移流方程式に対してそれぞれMini要素を用いて有限要素計算を行った.その結果,いずれの問題でも界面におけるフラックスはほぼマシンイプシロン程度で0であり,その結果として本手法の質量保存率が高いことが示された.一方,混ざらない非圧縮性の2流体問題は一般に,不連続な粘性係数および密度をもつNavier-Stokes界面問題で記述される.そこで,動粘性係数υの不連続性を考慮したStokes界面問題の有限要素近似の考察を念頭におきながら,フラックス・フリー有限要素法の誤差評価および収束性を考察した.具体的には,P_1isoP_2/P_1要素をモデルとして,動粘性係数υの三角形要素における近似を考慮したStrangタイプの誤差評価式をベースにし,界面の滑らかさ及びStokes界面問題の解の正則性を仮定して,フラックス・フリー有限要素近似の収束性を示した.
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