Research Abstract |
一昨年度,昨年度に引き続き,超漸近解析的な形の消滅定理,すなわち,チェック・コホモロジーで表現すると,無限遠点が頂点となるいくつかの角領域による開被覆に対して,関数をデータとして与えその漸近級数等の条件を加えて,分解する関数の漸近展開性について従来より詳しい剰余項の評価,漸近級数の係数の評価を伴う形まで精密化するという研究を行ってきている. 一昨年度のAdri B.Olde Daalhuis氏との共同研究の主たる定理,Level 1,Level 2の超漸近解析的な評価を伴う形の精密化.すなわち,通常の漸近展開をある適切な項までで打ち切り,剰余項が指数減少となること,その剰余項を積分表現を用いてそれを展開し適切な項までで打ち切ると新たな剰余項がより強い指数減少となることを2段階まで実行した結果については,京都大学数理解析研究所講究録1367に掲載された.その応用として,Bessel方程式に付随する非同次方程式の解,特にAnger関数についての応用例を計算した. 今年度は,Airy方程式に付随する非同次方程式の解への,特にScorer関数への応用を課題の一つとした.これを考えるとき,まず,Airy関数の無限遠点の周りでの漸近展開においては,元の変数の3/2乗を新たな変数にとらねばならいことについて再考察した.形式解を計算する方法として,連立系に持ち込み,Shearing変換をした後,ブロック対角化を行うための方程式を考えることにより,元の変数の3/2乗を新たな変数に採用すべき必然性が見えてきた.主要な特異部分を取り出した後に線形方程式を利用することにより漸近級数の各項の係数を決定するという見通しのよい方法が確立できた.Scorer関数への応用を考える際には,Scorerの結果のように新たな変数をとらずに済むはずだが,我々の方法では,今のところは元の変数による記述に戻す方法は分かっておらず今後の課題となっている. なお,指導学生の二変数合流超幾何微分方程式の漸近解析の論文が出版された.
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