Research Abstract |
非有界領域における半線形拡散方程式への応用を視野に入れながら,熱方程式の解の形状,特に解の最大点の挙動について,球の外部領域において研究を行った.一般に,非有界領域については,固有関数を用いた解析手法が有効でないため,また熱方程式のグリーン関数について得られる情報の少なさ故に,解の最大点挙動について研究を行うのは,球の外部領域という最も簡単な場合にでも難しかった.しかしながら,研究代表者石毛は球の外部領域については,ノイマン境界条件,ディリクレ境界条件共に,最大点の挙動について詳しく研究を行った.この結果を受け,調和関数と解の最大点挙動の関係が明らかになり,大阪府立大学の壁谷喜継氏とともに,低階項を加えた場合の,解の微分の減衰の早さ及び解の最大点挙動について研究を行った.この研究より,調和関数の形状,特に調和関数の空間変数無限大における増大度が解の微分の減衰の早さや解の形状に強い影響を与えていることが明らかになり,またそれらのその決定メカニズムが明らかになった.これらの解析には,自己相似変換から現れる特異点が問題になるが,本研究で培った評価と比較関数をうまく使うことによって,様々な評価を得ることが可能になり,それによって解の詳しい挙動解析が可能になったのが大きい. また,研究代表者石毛の指導学生である川上竜樹氏とともに,半線形拡散方程式の大域解の漸近挙動について考察した.特に,十分時間が経過した後,非線形項の影響が少なくなり,線形熱方程式の解によって半線形拡散方程式の解が近似できる場合について考察した.この解析手法は,自己相似変換を用いる従来の方法とは異なり,エントロピーを用いることが特徴的であり,多孔質媒質方程式に対するCarrilloとToscaniらによる2000年の結果を改良することによって得られる,この方法により,誤差項評価を含めて,従来よりも広い範囲の初期条件に対して漸近挙動を得られることがわかる.この方法の将来性には期待するところ大であるが,研究は始まったばかりであり,今後の進展に期待するところである.
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