2003 Fiscal Year Annual Research Report
量子的インフレーション宇宙における時空構造の進化とそのシミュレーション
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15540265
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
南部 保貞 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40212112)
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Keywords | gradient expansion / インフレーション / 再加熱 / 反作用 |
Research Abstract |
量子効果の時空構造への影響を取り入れる準備として,非一様時空の表現方法の一つであるgradient expansionの性質の再検討をおこなった.この方法はEinstein方程式に含まれる空間微分の階数についての摂動展開で近似解を構成する手法であり,展開の0次(background)においても非線形のゆらぎを取り入れる事ができる.物質場として非線形相互作用する2つのスカラー場を持つモデルを用いて,インフレーション後の再加熱時における非一様構造の進化を,数値的及び解析的に取り扱った. 再加熱時においてはコヒーレントに振動するインフラトン場によって引き起こされるパラメーター共鳴によって,物質場と計量のゆらぎが増幅される.gradient expansionを用いた数値計算ではゆらぎは線形成長の時期を経て非線形成長の時期に入り,最終的には一定の振幅を持つランダムな空間パターンが実現される.これは扱っているモデルがカオス系であること,0次のgradient expnasionが各空間点間の相関を持たないという事より理解できる.ゆらぎのパワースペクトルは初期に用意するゆらぎのパターンによらず,最終的にはホワイトノイズのパワースペクトルに移行してしまうが,中間段階での進化は初期のパワーインデックスによって異なる.gradient expansionの解を一様等方なフリードマン宇宙のまわりで2次まで摂動展開することより,パワーインデックスの時間変化の様子を解析的に導出することに成功した. 以上に加えて,フリードマン宇宙上での長波長非線形ゆらぎの反作用効果が,0次のgradient expansionの解に内在していることが,繰り込み群を用いた定式化で明らかになった.
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