2004 Fiscal Year Annual Research Report
ゲージ場および弦理論における深非弾性相互作用の構造
Project/Area Number |
15540266
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植松 恒夫 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80093194)
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Keywords | 弦理論 / ゲージ場 / 双対性 / 深非弾性散乱 / スピン依存分布関数 / 摂動論 / QCD / 構造関数 |
Research Abstract |
本研究計画は、従来の摂動論的量子色力学ではあまり論じられてこなかった深非弾性過程でのQCDの新たな特徴を弦/ゲージ双対性を基礎に研究を進めることを目的とする。最近の弦理論における大きな発展としてlarge N極限の超共形SU(N)ゲージ理論とAdS空間の超重力/弦理論との対応関係いわゆるAdS/CFT対応がある。ここではこの双対性を手がかりとして、ゲージ場と弦理論での深非弾性過程を解析し、これまでの摂動論的QCDによる弱結合の強い相互作用から、中間領域を経て強結合の強い相互作用の領域での深非弾性散乱過程の構造を明らかにするのを目標とする。当該研究計画の第2年度である平成16年度は、弦模型における深非弾性散乱過程での構造関数をBjorken変数が取りうる値の領域に応じて理論的に解析した。特に、AdS/CFT対応に由来するコンフォーマル不変性に着目し、small xで弦の励起状態が中間状態で寄与する場合について、偏極、非偏極構造関数両方の場合につき調べた。一方、将来の電子・陽電子線形衝突型加速器で重要となる偏極仮想光子の構造関数のQCDでの計算及び仮想光子中のクォークとグルーオンのスピン依存分布関数の解析を遂行した。また、2007年に開始される予定のハドロン・コライダーLHCでの強い相互作用の効果について摂動的QCDの立場からの検討をKEKの研究者と行った。さらに、偏極電子・陽電子散乱での仮想光子のスピン依存構造関数を将来の線形e^+e^-衝突型加速器での実際の測定におけるkinematicsの分析を含めて、研究を遂行した。また、核子の偏極構造関数の場合に分析した標的質量依存性を、演算子積展開枠内でのO(4)展開によるNachtmannモーメントを用いて仮想光子のスピン構造関数の場合についても調べた(Phys.Rev.Dに発表)。口頭では、4月にドイツのツィノヴィッチで開催されたLL2004の会議において発表した(DESY Zeuthenのホームページを参照)。国内では3月に千葉で開催の物理学会においてQCDのシンポジウムで講演した。計画の実施においては、国内各地とりわけ、東大・高エ研・横浜国大などの関連する分野の研究者との討論・研究交流が有益・不可欠であった。
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