2003 Fiscal Year Annual Research Report
動的クォークの効果を取り入れた大規模数値シミュレーションによる格子QCDの研究
Project/Area Number |
15540279
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大川 正典 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00168874)
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Keywords | 格子QCD / 動的クォーク / ハドロン行列要素 |
Research Abstract |
強い相互作用を支配する法則は量子色力学であると考えられており、その定量的研究は素粒子物理学の最も重要な課題の一つである。これを可能にしたのが格子量子色力学(格子QCD)であり、計算機の発達とともに数値シミュレーションにより物理量を定量的に求める方法が飛躍的に進歩して来た。特に動的クォークの効果を無視したクエンチ近似においては、大規模な数値計算が高統計で出来るようになり、種々のハドロン行列要素の連続理論での値が求まっている。しかし、これらの計算は近似計算であり、計算されたハドロンの質量スペクトルは実験値から5-10%程度ずれている。最近の研究により、2フレーバー(u, dクォーク)の動的クォーク効果を取り入れることにより、このずれが半分以下になることがわかっている。我々は過去数年間、3フレーバーの動的クォークの効果を効率よく取り入れる新しいアルゴリズムを開発してきた。本年度は、有限の格子間隔から生じる系統誤差を小さく出来るO(α)improved Wilsonフェルミオンに対し新しいアルゴリズムを適用し、大規模数値シミュレーションを格子間隔α^<-1>【approximately equal】2GeVの格子上で行った。種々の中間子の質量スペクトルを計算し、sクォークの動的効果を取り入れることによりに実験値と誤差の範囲内で一致する質量スペクトルが得られることや、クォーク質量等の基本パラメーターが矛盾なく求められることを示した。また、2フレーバーの動的クォーク効果を取り入れたシミュレーションにより、Bファクトリー実験の解析に重要な役割を持つ、B中間子のバッグ定数の計算を行った。
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