Research Abstract |
1.スクッテルダイト型2元化合物の電子状態の内部パラメーター依存性 スクッテルダイト型2元化合物はTX_3と表され,ここでTはCo, Rh, Irであり,XはP, As, Sbで計9種類の組み合わせがあり,ほかNiP_3が報告されている。原子位置は,充填スクッテルダイトから希土類元素を除いたものに一致する。我々は既にFLAPW法を用いて,一定の計算精度で10種類のスクッテルダイト型2元化合物の電子構造を系統的に計算し報告した。計算結果より,金属であるNiP_3を除いて,元素の組み合わせにより半導体,零ギャップ半導体,半金属になるが,基本的に内部パラメーターuとvで整理できることがわかった。CoAs_3において,作為的にuとvを変化させて計算したところ,12個のAsの作る20面体間の距離と20面体内の短い稜の長さがほぼ等しい場合は零ギャップ半導体,20面体間の距離が長い場合は半導体,短い場合は半金属となった。これは,As_<12>-p状態よりなる分子軌道間の2中心積分の変化で説明できる。 2.PrRu_4P_<12>低温相結晶構造を持つLaRu_4P_<12>の電子構造 PrRu_4P_<12>は63Kで金属-絶縁体転移を生じ,同時に低温側で結晶構造が歪み,Prサイトは2種類に分かれる。各サイトでのPrイオンの結晶場分裂が中性子実験で測定されており,異なるレベルスキームとなることが報告されている。結晶構造の歪みが非常に小さいことから,この結晶場の違いはp-f混成効果で考えると,Pr-f軌道と混成するP-pバンドが両サイトで異なることを示唆している。 PrRu_4P_<12>の低温相での結晶構造(単純立方格子,空間群Pm-3,T_h^1,#200)を仮定したLaRu_4P_<12>の電子構造をFLAPW-LDAで計算し,P-pバンドとLa-f軌道との混成を詳細に調べた。その結果,La-f軌道とP-pバンドの混成は,対称性からサイト依存の選択性を持つことがわかった。これが,Prサイトごとに結晶場が異なる原因の一つと考えられる。
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