2004 Fiscal Year Annual Research Report
モット転移近傍に位置する強相関有機導体の金属-絶縁体-超伝導相分離の研究
Project/Area Number |
15540329
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 孝彦 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (20241565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米山 直樹 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (80312643)
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Keywords | 有機導体 / 金属絶縁体転移 / モット転移 / 相分離 / 赤外反射スペクトル |
Research Abstract |
本研究では,SPring-8放射光を使用し赤外光ビームサイズを赤外波長程度に絞ることで可能となるマイクロメーターオーダーの局所領域における赤外反射スペクトル測定を,試料上で2次元走査測定することにより,特定の反射スペクトル構造を利用して電子状態を2次元空間可視化する手法(SMIS測定)を用いて,バンド幅制御型モット転移系有機超伝導体である重水素分子置換κ-[(h8-ET)_<1-x>(d-ET)_x]_2Cu[N(CN)_2]Brにおける電子相分離の実空間可視化に成功した.SMIS測定の結果,低温では,x=0,x=1の試料は,それぞれほぼ均一に金属的,絶縁体的になっているが,x=0.5よりも置換量が多くなると,空間的に不均一な電子状態が現れることが判明した.x=0.5では全体的に金属的なところに絶縁体的なドメインが現れている.このドメインの大きさは直径がおよそ50μm程度である.さらに置換量を増やしていくと絶縁体的な領域が増えていきx=1でほぼ均一に絶縁体化する.このように置換量xを変化させたモット転移近傍の試料でマイクロメーターの大きさで金属と絶縁体の領域が共存していることが直接的に見出された.この電子相分離の起源は,遷移金属酸化物で観測されているナノスケールの本質的「不均一」とは異なり,モット1次相転移過程において生じる核生成あるいはスピノーダル分解によって形成される空間的な2相共存と考えられる.より1次相転移に近い置換量の試料において,このモット1次転移に特徴的なS字的な相転移線の温度変化に対応する相分離のリエントラント的振る舞いが観測された.このことは,1次転移線上における拮抗した2つの相の自由エネルギーの安定性によって出現する相分離であることを示している.
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