2004 Fiscal Year Annual Research Report
一次元導体における異常なゆらぎとその動的性質に対する効果の理論的研究
Project/Area Number |
15540343
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
吉岡 英生 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (40252225)
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Keywords | 有機導体 / ナノグラファイトリボン / モット絶縁体 / 永久電流 / 電気伝導 / 金属絶縁体転移 |
Research Abstract |
1.ジグザグ型ナノグラファイトリボンの永久電流と輸送特性 ジグザグ端を有するナノグラファイトリボンはフェルミエネルギー近傍で(k-k_F)^N(N【greater than or equal】2はリボンの幅)に比例するフェルミ速度がゼロになるような特異なバンド構造を有する物質である。この特異なバンド構造に起因する性質を調べるため、この物質がリング構造をなした場合の永久電流と金属電極と理想的に接触した場合の電気伝導特性について研究を行ない、以下のような知見を得た。まず、永久電流に関してはフェルミ測度がゼロであるにもかかわらず、永久電流が流れうることを見出した。さらに、その振幅のリング長依存性は幅Nが偶数の場合は指数関数的に減少するが、奇数の場合にはべき的に減少し、そのべきの値はNによって与えられることを見出した。このような幅が偶数の場合と奇数の場合の定性的な違いは電気伝導特性においても見出された。すなわち、金属電極と接触したナノグラファイトリボンのコンダクタンスは幅Nが偶数の場合には長さの二乗に反比例して小さくなるが、Nが奇数の場合には一定値となる。このように、ジグザグ型ナノグラファイトリボンの性質は幅が偶数が奇数かによって定性的に異なることがわかった。 2.充填率1/4近傍の一次元電子系における不整合モット絶縁体状態 近年精力的に研究が行われ様々な興味深い現象が見出されている分子性導体は、主にドナーとアニオンの比が2:1の塩である。極最近、ドナーとアニオンの比が2:1から少しはずれ不整合となっている分子性導体、(MDT-TSF)X_n、(MDT-ST)X_n、(MDT-TS)X_n(Xは一価のアニオンであり、n【similar or equal】0.42-0.45)が合成され、その伝導特性や磁気的な性質が測定されている。結果は以下のとおりである。MDT-TSF塩、MDT-ST塩は常圧で金属的は挙動を示し4Kで超伝導体へ転移するが、これらに比べバンド幅が狭い(MDT-TS)(AuI_2)_<0.441>は、常圧において85Kで抵抗極小を示して絶縁化し、さらに50Kで反強磁性体へ転移する。また、X線散乱の実験から、これらの物質群ではドナー分子、アニオン分子ともに、それぞれ異なった周期で規則的に配列していることが観測されている。電子の充填率が格子と不整合であるにもかかわらず金属絶縁体転移がおこるのかを明らかにするため、不整合格子を有する一次元電子系の基底状態を調べた。その結果、アニオンからのポテンシャルを考慮すると、系は有効的に充填率が1/2となり、その結果絶縁体の基底状態を持つことが見出された。さらに、バンド幅を増加させることによって、基底状態は絶縁体から金属状態へ転移する。この結果は上に述べた物質群の金属絶縁体転移を定性的に説明する。
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Research Products
(1 results)