2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15540354
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
米満 賢治 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (60270823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸根 順一郎 九州工業大学, 工学部, 助教授 (80290906)
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Keywords | 交互積層型電荷移動錯体 / ハロゲン架橋白金錯体 / スピンクロスオーバー錯体 / 中性イオン性相転移 / 光誘起相転移 / 電荷密度波電荷分極相転移 / 時間依存量子発展方程式 / モンテカルロ計算 |
Research Abstract |
交互積層型電荷移動錯体では中性イオン性相転移に付随して二量化転移や強誘電転移が起こる。TTF-CAでは常圧でこれらが同時に起こるが、高圧下では異なる温度で起こるために常誘電イオン性相が生じ、三重臨界点の存在が指摘されている。電荷移動量と二量化歪みが必ずしも同時に変化しないことを考慮した最も簡単な古典的モデルである、擬1次元ブルーム・エメリー・グリフィスモデルによると、中性相から常誘電イオン性相に転移する温度の圧力依存性が正しく再現されない。このモデルでは厳密に解ける極限的な場合について、エントロピーの効果あるいはモデルに内在する擬対称性により、ほぼ普遍的にこの転移温度の圧力依存性が決まる。ゆえにこのモデルでは表せない弱い相互作用が効いていることが示唆される。そこで量子化学計算から既に示唆されている電歪効果、つまり鎖に垂直な方向の格子変位と電荷移動量の相互作用を取り入れた。自由エネルギーに電荷移動量の4乗項が加わり、TTF-CAの相図と鎖に垂直な方向の格子定数を同時に再現することができた。分極率の温度・圧力依存性について大雑把にしか再現しないのは、電子の遍歴性による効果だと思われる。 2段転移するスピンクロスオーバー錯体の一般的な性質をみるために、二量体の内外、副格子の内外で競合する相互作用をもつ二副格子の古典スピンモデルを考え、平均場計算とモンテカルロ計算を行った。二量体内の結合が強いほど中間相の温度域が広いことを確認した。連続光照射中の時間発展をモンテカルロ法で計算し、光照射強度に対する閾値挙動、渦渡的に現れる高低および低高スピン状態の相分離、光照射強度によって現れる高スピン割合のステップ的増加などを見出した。二量体内の結合が強ければ高低・低高スピン状態は長時間にわたって存在できる。これは最近観測されている新たな2段転移スピンクロスオーバー錯体の光誘起状態と矛盾しない。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] K.Yonemitsu, N.Miyashita: "Coherence Recovery and Photoinduced Phase Transitions in One-Dimensional Halogen-Bridged Binuclear Platinum Complexes"Physical Review B. 68. 075113 (2003)
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[Publications] N.Miyashita, M.Kuwabara, K.Yonemitsu: "Electronic and Lattice Dynamics in the Photoinduced Ionic-to-Neutral Phase Transition in a One-Dimensional Extended Peierls-Hubbard Model"Journal of the Physical Society of Japan. 72. 2282-2290 (2003)
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[Publications] K.Yonemitsu: "Correlation-Induced Dimensional Crossovers of Charge-Transfer Excitations in Quasi-One-Dimensional Organic Conductors"Synthetic Metals. 133-134. 7-9 (2003)
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[Publications] K.Yonemitsu: "Dynamic Spin Correlations near Neutral-Ionic Phase Transitions"Physica B. 329-333. 1219-1220 (2003)
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[Publications] K.Yonemitsu, N.Miyashita, M.Kuwabara: "Photoexcited States and Photoinduced Dynamics in Electronic Phases of MMX-chain Systems"Synthetic Metals. 135-136. 521-522 (2003)
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[Publications] N.Miyashita, M.Kuwabara, K.Yonemitsu: "Photoinduced Dynamics of Ionicity near the Neutral-Ionic Phase Boundary in a One-Dimensional Extended Peierls-Hubbard Model"Synthetic Metals. 135-136. 645-646 (2003)
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[Publications] 米満賢治: "「低次元金属錯体の多様な電子物性の起源」,大川尚士, 伊藤翼編「集積型金属錯体の科学」,II部12章"化学同人. 9 (2003)