2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15540356
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
櫻井 吉晴 財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門I・非弾性散乱チーム・チームリーダー, 主幹研究員 (90205815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 真義 財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門II・分析チーム, 副主幹研究員 (10344392)
山本 悦嗣 日本原子力研究所, 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (50343934)
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Keywords | UGe2 / 磁気コンプトン散乱 / 超伝導 / 強磁性 / 高圧 |
Research Abstract |
平成15年度は、常圧下強磁性状態UGe2のスピン・モーメント成分同定とメタ磁性的転移温度T*における変化を観測するために、以下の5項目を実施した。 1.常圧下での磁気コンプトン散乱実験 SPring-8とKEKにおいて磁気コンプトン実験を実施した。結果は、UGe2のスピン・モーメントと軌道モーメントの比は50K以下の強磁性状態ではほぼ一定(約2.2)で、T*近傍において際立った変化は観測されなかった。しかし、磁気コンプトンプロファイル形状に十分な変化が観測され、T*近傍において5f電子軌道が揺らいでいる可能性が示唆された。 2.原子軌道モデルに基づいた磁気コンプトンプロファイルの解釈 前項目1で観測された実験結果を原子軌道モデルに基づいて説明するために、磁気量子数別原子軌道のコンプトン・プロファイルを計算するプログラムをFortranで作成した。本計算プログラムでは、波動関数の動径成分として、HermanとSkillmanの計算結果を採用している。平成16年度は、有効核電荷を考慮した計算と分子軌道への拡張を行う予定である。 3.常圧下でのX線吸収磁気円二色性実験 UGe2のスピン・モーメント成分同定を補助するために、X線吸収磁気円二色性実験をKEKで行った。その結果、U-5fは予想どおりにスピン分極していたが、U-6d電子は分極していないことが判明した。この結果は、磁気コンプトン散乱実験結果の解釈において、U-5fのみ考慮すればよいことになる。 4.高圧下磁気コンプトン散乱実験用クランプセルの製作と性能試験 磁気コンプトン散乱実験用にクランプセルを設計し、製作した。圧力として、1.2GPaが達成され、標準試料のFeを用いた基本性能評価とUGe2の予備実験を行った。その結果は、セル材料からの散乱の影響で観測される磁気効果は約4分の1に落ちるが、本研究目的を達成するために実験は十分可能であることが確認された。平成16年度に高圧実験を行う予定である。 5.ESRFでの実験と意見交換 櫻井と伊藤の2名がESRFに出張し、ESRFの実験装置を用いてコンプトン散乱実験を行った。また、ESRFの研究者と実験装置と研究の将来展望について意見交換を行った。ESRFでは、高圧下磁気コンプトン散乱実験のために、屈折レンズを用いた高エネルギーX線(120keV)の集光を行っており、この手法はSPring-8でも有用であると思われる。
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