2004 Fiscal Year Annual Research Report
強いランダム異方性をもつハイゼンベルクスピングラス-1ステップ・レプリカ対称性の破れを伴う相転移現象-
Project/Area Number |
15540357
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
白倉 孝行 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (90187534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 史卓 東北大学, 工学部, 教授 (90124627)
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Keywords | スピングラス / モンテカルロシミュレーション / ランダムスピン系 / ハイゼンベルグモデル / フラストレーション / レプリカ対称性の破れ |
Research Abstract |
前年度に引き続き、3次元ハイゼンベルクスピングラス(SG)の(1)基底状態と励起状態の研究と(2)SG相転移点近傍でのオーダーパラメーター分布関数の研究を行った。 (1)に関しては、前年度絶対零度T=0での状態を数値的に調べ、パリジ状態の存在を示唆する結果を得た。すなわち、低温相は何らかのレプリカ対称性破れ(RSB)の相であることが示唆された。今年度はパリジ状態の近傍の励起状態の性質、有限温度でのパリジ状態間の遷移の様子を調べた。特に、パリジ状態に共役な磁化の緩和過程より、パリジ状態の緩和時間を見積もり、それがSG相転移温度以下ではサイズとともに発散的な振る舞いに変化することを確認した。 (Ground state and low-lying excitations in a Heisenberg spin-glass model in three dimensions,2004 Monte Carlo Simulation of the ±J Heisenberg Model in Parisi States,2005) (2)については、今年度はランダム異方性Dの導入による(等方的な場合との)定性的な変化の有無に焦点を当てた。川村らの先行研究では、「定性的な変化はない」という結論を出している。我々は、彼らより少し大きいランダム異方性(D=0.2J)でカイラリティ凍結q_cの分布関数P(q_c)を調べ、低温でのq_c〜0でのピークの(系のサイズによる)増加が、大きいサイズでは停止することを見いだした。これは、等方的な系での1ステップRSB的な相転移から、通常のフルRSB的な相転移への定性的な変化を示唆する結果である。カイラリティ凍結に対するBinder比の振る舞いが複雑なものになるのも、小さいサイズでの等方的な系の振る舞いから大きなサイズでのランダム異方性の効果が現れる振る舞いへのクロスオーバーのためと思われる。川村らのシミュレーションではランダム異方性が小さかったので、調べられたサイズではまだランダム異方性の効果が現れるサイズに達していなかったものと思われる。 (A peculiar behavior of the overlap distribution in a Heisenberg Spin Glass model in three dimensions,2005)
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Research Products
(3 results)