2003 Fiscal Year Annual Research Report
量子連続測定を受ける量子系におけるカオス-非カオス遷移
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15540361
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鎮目 浩輔 筑波大学, 図書館情報学系, 助教授 (90211953)
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Keywords | 量子 / カオス / 力学 / リヤプノフ指数 / ストロボ図 / ダフィング振動子 / 波束の収縮 / 連続測定 |
Research Abstract |
本研究の目的は連続測定を受ける量子系で、測定の強度に応じてどのようにカオスが現れるかを調べる事である。測定強度が十分強ければ系は量子性を失い、運動は古典力学で記述されるものとなり、カオスが現れる事は既に知られている。ここで新たに調べようとしていることは測定強度が弱く、系に量子性が残る場合においてもカオス的性質が現れるか、もし現れるならばそれは通常の古典カオスとどのように異なる性質をもつか、という点である。これは量子カオス研究の一つであるが、量子ダイナミクスに密着した観点であり、古典カオスとも自然に結びつくという点で大きな特色がある。 今年度は、まず次の働きをするプログラムを作成した:「代表的なカオス系であるDuffing振動子の、連続測定の元での量子的な時間発展を解いて位置および運動量の期待値の時間変化を求め、そのLyapunov指数およびストロボ図を求める。」 このプログラム作成には科研費で購入したワークステーション一式を用い、テスト計算、および計算が容易な場合(プランク定数を大きいとした場合)の小規模な計算でいくつかの重要な結果を得た。まず量子性が残る場合でも軌道のLyapunov指数は0にはならない場合もあることを見いだした。このことは量子的な系であってもカオス的な性質を持ちうる、ということであり、量子的な運動でカオス性を見いだすことは困難である、というこれまでの常識を破るものである。但しLyapunov指数は当然の事ながら古典的な場合よりも小さくなる。即ち連続測定を受けるカオス的な系では連続測定の強度に応じた独自のカオス的性質を持つ事を見いだした事になる。またストロボ図には、古典系と異なるパターンが現れており、このカオスがLyapunov指数以外にも古典と異なる独自の性質を持つ事を表すと考えられる。 今後は開発したプログラムを用いて大規模な計算を行い、上記の結果を精密に確認した上で、計算するパラメータの幅を広げて、この量子カオスの性質を調べる予定である。
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