2004 Fiscal Year Annual Research Report
量子連続測定を受ける量子系におけるカオス-非カオス遷移
Project/Area Number |
15540361
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鎮目 浩輔 筑波大学, 大学院・図書館情報メディア研究科, 助教授 (90211953)
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Keywords | 量子力学 / 量子古典対応 / 量子カオス / 量子連続測定 |
Research Abstract |
量子系が強い連続測定を受けると量子古典遷移がおき、古典系に帰着することが知られている。特にHamiltonianが古典的扱いでカオスを起こすものならば、遷移の結果古典カオスの性質を見せる。 本研究の目的は連続測定が弱く量子古典遷移を起こさない場合、つまり系がまだ量子性を残している段階でもカオス的な振舞いを起こすかどうかを調べる事であった。我々はそのために、系として扱いが容易な一次元量子ダフィング振動子をとり、連続測定の元での量子的波動関数の時間発展を数値的に調べた。連続測定の元での時間発展のモデルにはCaves-Milburnの理論に基づいたStochastic Schrodinger方程式を用い、その方程式を異なる乱数系列を使い数値的に解くことをパラメータごとに数十回繰り返した。そして特に粒子の位置xと運動量pの期待値(<x>,<p>)が作る軌道のLyapunov指数と、そのストロボ図を得た。それらから、結果として次の知見を得た。 1.観測が弱く、系が量子性を強く残す状況であってもLyapunov指数は0でない値を取りえる。 2.ストロボ図もカオス的な性質を見せる。 但し古典の場合とは異なった次の性質も得た。 3.Lyapunov指数は古典の場合よりも小さい値になる。その値は、量子性が残る度合いに応じて変わるが、波動関数が広がっている場合でも、古典的値の数分の1程度になりうる。 4.ストロボ図は古典的な場合とは異なる、一種の流れのパターンのような様子も見せる。 これらの結果より、系がまだ量子性を残している段階でもカオス的な振舞いを起こすといえる。またその性質には古典的な場合とは異なった独自のものがあることも言える。
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