2004 Fiscal Year Annual Research Report
スピンギャップを内在する量子反強磁性系におけるラマン散乱スペクトルの理論計算
Project/Area Number |
15540362
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
夏目 雄平 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (80114312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 隆史 千葉大学, 理学部, 教授 (70189075)
福元 好志 東京理科大学, 理工学部, 助手 (00318213)
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Keywords | 反強磁性体 / 交換散乱スペクトル / ヤーンテラー歪 / 量子カオス / ボース凝縮 / シングレット基底 / スピン波 / スピンギギャップ |
Research Abstract |
本研究は、化合物反強磁性体における磁気励起による光学的性質に関する理論計算の研究として、スピン系の低エネルギー励起の性質を調べている。まず、伝統的方法とも言えるホルシュタイン-プリマコフのスピン波描像に基づいて散乱スペクトル構造を再構成することから出発している。次に、これらの結果に基づいて、古典的な磁気モーメントが見かけ上消失している量子反強磁性系のシングレット基底状態とその上に開いているスピンギャップについて解析した。このエネルギーギャップはこの系の磁気的・光学的物性を支配する重要な要素である。これらについては、有限スピン数の系を数値的に厳密対角化して、その固有値・固有ベクトルを求めて解析した。特に、スピン間の空間的な相関関数の導出を行い、磁気的に新しい相が現れる可能性を調べた。さらに化合物磁性体の実験との対応をつけるため、ラマン散乱における交換散乱スペクトルの数値的再構成を試みた。それらを伝統的なスピン波励起による2マグノン散乱過程と比較して検討した。対象とした量子反強磁性体は、平面上にシングレット・ダイマーがお互いに直行して整列した銅酸化物反強磁性体である。また、この研究は磁性の発現を与える基礎メカニズムにかかわる問題として、遷移金属イオンがイオン結晶中で呈するヤーン-テラー効果と密接に関連している。そこで、磁性化合物を対象としてヤーン-テラー歪の効果と光学スペクトルとの関係を調べた。強調したい点は、その歪みが静的な場合と動的な場合の相違に着目した研究展開過程において、この効果を軌道角運動量が持つ磁気的g因子に現れる量子カオス問題として捕らえるという視点を得たことである。これは、磁性体研究に新しい視点を与えると同時に現実性のある量子カオスモデルを与るものである。
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