2003 Fiscal Year Annual Research Report
ペロフスカイト型酸化物の量子効果による物性と相転移の理論
Project/Area Number |
15540367
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松下 栄子 岐阜大学, 工学部, 教授 (20183105)
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Keywords | ペロフスカイト型 / 酸化物 / 相転移 / 量子効果 / プロトン伝導 / リラクサー |
Research Abstract |
酸素八面体の連結から成るペロフスカイト酸化物の特異な伝導現象に注目し、構造がもたらすフォノン特性と、内在する量子効果が果たす役割を解析理論で研究した。 まず、(1)プロトン伝導について、カチオン置換したABO_3(A=Sr,Ca ; B=Ti,Zr,Ce)の酸素八面体の頂点酸素Oを共有した頂点接触型の構造中を、プロトン(H+)がO-O上で水素結合を作りながら次々と拡散する機構の電気伝導理論を完成させた。これはイオン伝導の一種であるが、量子効果の働く基礎物理の問題であり、半導体並の伝導度が得られるため、クリーンな燃料電池を開発するのに不可欠な研究とされる。この成果は、辺接触型の構造中をLi+が拡散する物理現象に応用でき、現行のリチウム電池を改良する理論予測に発展させることができた。 また(2)量子常誘導性について、酵素Oの同位体置換や圧力印加によってSrTiO_3の量子効果を制御することにより、常誘電性と強誘電性が切替わる現象の微視的理論を試みた。これは、酸素八面体の積層構造の違いからくるフォノンの種類と役割を解明することにより、高温超伝導体におけるフォノンの寄与を解く鍵になるものと予想され、次年度以降の研究に発展させる目処がついた。 さらに(3)リラクサー特性については、小型で大容量のコンデンサーや圧電素子に応用できる観点から発現機構の解明が待たれるが、ナノ量子体をFeRAMメモリーに応用するのに有力とされるモルフォトロピック相転移の現象との共通点に着目して、強誘電体反強誘電体混晶の相境界で見られる物性異常の理論を展開した。その結果、これまでPbを含むペロフスカイト酸化物でしか得られなかったリラクサー等の特性の出現条件や制御方法を解明できる手がかりを掴むことに成功した。 以上の結果は、次年度に研究を進展させる大きな礎になるものと思われる。
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Research Products
(1 results)