Research Abstract |
ネマチック液晶MBBAに磁場を印加してsplay-bendの弾性変形を有する直線状の配向壁を作成し,更に電場を印加すると,弾性率の低いtwist変形が起きて直線状の配向壁は不安定化する。その後,正弦的な揺らぎが増大し,その後に配向壁の形はzigzag状になる。この現象は,1次元保存系のスピノーダル分解と同等である。通常は,1次元系を観測することが困難であるが,液晶の性質を用いることにより,この観測が可能となる。今年度は,スピノーダル分解初期過程における空間揺らぎの時間発展,初期の空間揺らぎの分布が後期のzigzagのサイズ分布に及ぼす影響,2時間相関関数の指数に着目して研究を行った。 1.初期過程の約60秒間,配向壁の形を画像処理によって解析した。ある空間モード(基本モード)が指数関数的に増加し,やがてそのモードが飽和すると配向壁の形はzigzag状になった。また,基本モードが成長するに連れて高調波成分も指数関数的に増大した。基本モードの指数関数的成長は,従来の3次元系のスピノーダル分解の特徴と同じであった。そして,配向壁の運動方程式を基にして,この指数関数的成長を理論的に説明した。 2.実験では,配向壁の初期揺らぎを制御することはできない。そこで,実験系に対応するモデルを用いて,様々な初期分布を用いてその後の時間発展を計算するシミュレーションを行った。その結果,後期過程のzigzagの分布は,初期分布に影響することが明らかになった。 3.2時間相関関数のベキ指数を実験によって求めた結果,約2であることがわかった。実験では,多くのデータを取ってこの指数を求めることが困難であるので,シミュレーションを行った。その結果,このベキ指数は,時間の基準の選び方に依存することがわかった。
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