2004 Fiscal Year Annual Research Report
ベルセロ法による高負圧発生技術と過膨張液相の熱力学的性質の測定
Project/Area Number |
15540391
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
大出 義仁 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (10024340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹澤 和寿 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (60236776)
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Keywords | ベルセロ法 / 負圧 / P-T相図 / 過膨張 / ネマチック / 一次相転移 / 凝縮相 / キャビテーション |
Research Abstract |
1:Ni基超合金単結晶製ベルセロ容器を用いた高負圧発生技術 Ni基超合金(CMSX-4)製試料室を持つベルセロ容器を脱ガス前処理(1200℃、24時間、10^<-5>Torr)後、水を抜気して容器に満たし、銅の単結晶から切り出したプラグで密封し、温度サイクル・ランを行い-120bar以上の高負圧を約0.1ccの水にいつでも発生できるまでにした。 これによりMo単結晶容器の欠点を克服し、耐食性に優れた全単結晶金属ベルセロ容器として使用可能となった。 2:ネマチック液晶、PMPEB,の熱力学的性質の負圧下での研究 ベルセロ容器にPMPEBというネマチック液晶を密封、その温度-圧力関係を測定して、 2-1)この液晶のP-T相図を描いた、 2-2)負圧下で等方液相-ネマチック相間の一次相転移を観測することができた、 2-3)融点の異なる3種の結晶相を発見し、また固相-固相間相転移に対応するP-T関係も測定し、PMPEBの大気圧下でのDSCデータとの対応も付けることができ、液晶物質のThermobarometryが展開できる。 3:微小体積変化の検知方法としてのベルセロ法 試料液体を容器に密封して始めに低温から加熱するが、試料室が最初に凝縮相のみで完全に満たされる温度(Tf)がベルセロ法の特性温度の一つである。固体試料と水を密封し、固体に何らかの体積変化が起きるとTfが変化する。これを利用して、Si,メソ多孔シリカ(固相)、孔内壁の吸着気体(吸着相)などが水に僅かに溶解したときの微小体積変化、およそ10^<-7>cc、をベルセロ法で検知できることを確認した。 4:これらの結果は、ベルセロ法が単に液体に負圧を発生させるユニークな方法であるだけでなく、物質のP,V,T関係を測定できる熱力学的な手段として利用できることを示したことになる。特に、結果2-2)は"気相にたいして共に過膨張準安定な2つの凝縮相間の一次相転移"で、液晶の熱力学的性質を負圧下で観測した世界最初のデータであり、「準安定状態の熱力学」の視点からも注目すべき結果であり、今後、さらに高負圧域の研究が魅力的である。結果2)は現在、J.Phys.D:Appl.Phys. (I.0.P.)に投稿中である。
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