2005 Fiscal Year Annual Research Report
広帯域誘電分光法による高分子-低分子量分子性液体混合系のガラス転移
Project/Area Number |
15540396
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
新屋敷 直木 東海大学, 理学部, 助教授 (00266363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木原 晋 東海大学, 理学部, 教授 (40191093)
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Keywords | 広帯域 / 誘電分光 / 高分子 / 分子性液体 / アルコール / 溶液 / ガラス転移 / 緩和現象 |
Research Abstract |
本研究では水溶液を含む様々な水以外の液体と高分子の混合系の超広帯域誘電分光(BDS)測定を30GHz〜1μHzの周波数域で行い,液体状態からガラス状態までの誘電緩和を観測し,高分子-低分子量分子混合系の緩和機構を調べる事を目的とする。 1.ポリエチレングリコール水溶液のBDS測定 分子量600のポリエチレングリコール(PEG)を用い,65wt%PEG水溶液の温度を300K〜133Kの範囲で変化させBDS測定を行った。この温度範囲では65wt%PEG水溶液は凍結せず,液体から192Kのガラス転移温度を経てガラス状態の固体へと変化する。測定の結果,全ての温度で対称な広がりを持つ誘電損失ピークが一つ観測された。PEG水溶液が液体状態では,この損失ピークの温度依存性は,温度の低下と共にみかけの活性化エネルギーが増大するが,ガラス転移温度以下では,見かけの活性化エネルギーが温度に依存しない。この結果は溶液のガラス転移が,ガラス転移とは直接関係が無さそうな局所的な水分子運動に対しても影響を与えている事が示唆された。 2.多価アルコール-PVP混合系のBDS測定 ポリビニルピロリドン(PVP)と様々な構造の多価アルコールとの混合系の25℃における広帯域誘電分光測定を行い,PVP-1価アルコール溶液と多価アルコール溶液それぞれで観測された高分子鎖の局所的な分子運動によると思われる緩和を比較した。その結果,1価のアルコール中の高分子の緩和の緩和時間は溶媒の粘性の1.3乗に比例するが,多価アルコール高分子溶液の高分子の緩和時間は溶媒粘性に比例した。1価のアルコールと多価アルコールの溶液中の高分子鎖の緩和時間の違いは,溶媒中の高分子の広がりや,高分子と協同的に分子運動を行う溶媒の有無などが原因であると考えられるが,現段階では明らかではない。
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