2005 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚角質層中の2つの細胞間脂質ラメラ構造と機能制御機構
Project/Area Number |
15540397
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
八田 一郎 福井工業大学, 工学部, 教授 (70016070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森島 洋太郎 福井工業大学, 工学部, 教授 (70028249)
太田 昇 (財)高輝度光科学研究センター, 協力研究員 (90353507)
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Keywords | 皮膚 / 角層 / 細胞間脂質 / X線回折 / 温度依存性 / ラメラ構造 |
Research Abstract |
皮膚角質層中の細胞間脂質は水分保持,薬物の経皮吸収,バリアー機能などにおいて重要な役割を果たしている.しかし,細胞間脂質がつくる構造についての研究は少なく,解明されていない点が多い.時には,誤った推測に基づく構造モデルによって機能が論じられていることも多々ある.このような状況下にあって皮膚角質層中で細胞間脂質が集まって形成する多重ラメラ構造を分子レベルで明らかにすることを目標に研究を行った. ヘアレスマウス角質層中の細胞間脂質ラメラ構造の温度依存性のX線回折実験を行った.哺乳動物の種によらず細胞間脂質ラメラ構造として炭化水素鎖の軸方向の周期構造として約13nmの長周期ラメラ構造と約6nmの短周期ラメラ構造が観測されている.一方,炭化水素鎖の軸と垂直方向には炭化水素鎖の充てん構造として六方晶と斜方晶の構造が観測されている.このラメラ構造と炭化水素鎖の充てん構造の間の関係を明らかにすることが細胞間脂質の分子レベルでの機能における役割を研究するためには重要である.本研究では,皮膚角層の熱測定により相転移の振舞を明らかにし,X線の小角広角同時測定の温度変化を測定して各相転移温度における構造変化に着目して解析することによって,ラメラ構造と炭化水素鎖の充てん構造の対応を明らかにすることを目指した.その結果,長周期ラメラ構造の炭化水素鎖の充てん構造は六方晶であり,短周期ラメラ構造の炭化水素鎖の充てん構造は斜方晶であることが分かった.すなわち,皮膚角層中の細胞間脂質は長周期ラメラ構造・六方晶と短周期ラメラ構造・斜方晶の2つのドメインから成っている。前年度までの研究結果と合わせて考察すると,長周期ラメラ構造は水層をもたない構造であり,短周期ラメラ構造は水層をもちその厚さが一定になるように,長周期ラメラ構造と短周期ラメラ構造が相互作用していると提案したが,2つのドメインの相互作用が重要な働きをしていることが明らかになった. したがって,本研究では,皮膚角層中の細胞間脂質は親水部をもっドメインと親水部をもたないドメインからなっており,外部からイオンや分子が皮膚角層に作用するときの構造に関する基本的な性質を明らかにした.
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