Research Abstract |
地球中心核(内核)が差動回転しているとすれば,地球自由振動の内核モードのスペクトルは何らかの影響を受けると考えられる。内核差動回転が地球振動スペクトルに及ぼす影響を調べるには,内核の異方性速度構造を知る必要がある。しかし,内核の構造の詳細は,内核を伝播するP波の走時異常などからおおまかな構造が示されているものの,必ずしも明ちかではない。そこで,内核構造を強く反映する内核モードのスプリティング関数の係数(C_<20>,C_<40>)をデータとして,内核の地震波異方性構造を逆解析により推定した。地球の自転軸に平行に六方対称軸をもつ異方性を仮定すると,内核の弾性的性質は5個の弾性定数で記述できる。したがって,5個のパラメータをスプリティング係数(C_<20>,C_<40>)から推定した。その結果,以下のことが明らかになった。弾性率が内核では空間的に変化しない場合,自転軸と赤道面に沿って伝わるP波速度の差の割合(ε)は1.7%であった。また,5個の弾性率が深さに依存して変化すると仮定した場合,εは深さの増加に伴って徐々に減少し,外核-内核境界から370kmの深さで最小値を取り,その後再び増加するという変化が見られた。この結果は,内核を通過するP波の走時異常から推定された構造と定性的に矛盾していない。また,εは内核では正の値を取り,外核-内核境界で3.8%,地球中心で6.3%と見積もられた。以上の結果を内核の異方性速度構造として与え,内核差動回転が内核モードのスペクトルに与える影響を調べた。地球の自転軸と六方対称軸が一致している場合,内核差動向転があってもスペクトルには変化が見られなかった。スペクトに変化が見られたのは,自転軸と対称軸が斜交する場合にのみであった。特に,横ずれ断層の震源メカニズムを持つ地震の場合,節平面に近い観測点で顕著な変化が見られた。しかし,一般的には,今回得た異方性構造を持つ内核が差動回転した場合,それによるスペクトルの変化は微小なものであり,実際の観測スペクトルからこの変化を検出するのは大変困難であると思われる。このことは,平成16年度に観測スペクトルから差動回転の検出を行って得た結論,即ち,差動回転は検出できなかったこと,と矛盾していない。
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