Research Abstract |
本研究の目的を達成するため,本年は中海・宍道湖・浦ノ内湾・網走湖・能取湖について水質・底質調査を行った.また,比較を行うため,サロマ湖・藻琴湖・濤沸湖などにおいても同様な調査を行っている.北海道汽水湖沼群(網走湖・能取湖・サロマ湖・藻琴湖・濤沸湖)については,ルート調査および約200地点におよぶ水質・底質調査を行った.阿蘇海については春季のルート調査および流出入調査を行った.中海・宍道湖では,冬季にルート調査及び採水調査を行った.本年度は,中海で珪藻を主体とする赤潮が発生し,中海表層水の懸濁態有機炭素量が増大した.今回の赤潮発生では,珪藻が90%以上を占め,表層水全体に高いクロロフィル量を示した.阿蘇海では不明瞭な塩分躍層を示しているが,その中にクロロフィル濃集層が観察された.しかし,流出入口付近では濃集層が不明瞭になる傾向にある.このようなパターンは,網走湖でも確認されており,汽水湖有機物解析に役立つ.また,阿蘇海の流出入口で水質・懸濁物量・クロロフィル量を観測し,流向流速計のデータと合わせることによって,潮汐による湖内生産物の流出量を明らかにした.その結果,一日の流出量は湖内で生産されたプランクトン全量の0.18%しか流出していないことが明らかになり,湖内で生産されたほとんどの有機物が湖内に堆積することが明らかとなった.網走湖の冬季の調査では,塩分躍層は夏季に比べて不明瞭になることが明らかになった.しかし,クロロフィル量の薄い濃集層は,塩分躍層の中間に明瞭に見られることが明らかとなった.これらにより,クロロフィル濃集層(高生産層)は,表層水全体,塩分躍層の上部,中間部,下部に見られることが明らかとなった.
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