Research Abstract |
本年度は,高知大学の海洋コア総合研究センターならびに京都大学にて,岩石磁気測定や粒度分析をおこなった.それらのデータの解析結果,採取後20年近く経過しているコアであっても,採取時のデータと比較して,残留磁化の磁化方位は概ね保存されており,堆積物は大きくは変質しておらず,調査可能なコアであると判断された.また,堆積物中の磁性鉱物は,3種類の磁気特性テスト(等温残留磁化付加テスト,高温熱磁化分析,低温残留磁化分析)の結果,ほとんどがマグネタイトおよびマグヘマイトであった.このことは南極周辺海洋底が,比較的酸化環境であることを示唆する.これらの堆物の起源は粒度分析よりほぼ南極大陸と推定されるが,その一例として,昭和基地近辺の陸上モレーン堆積物の磁性鉱物の検討を行ったところ,マグヘマイト化(低温酸化)していないマグネタイトであることが判明し,他大陸より低温の南極大陸上ではマグヘマイトは形成されにくいことも予想された.以上の結果から,マグヘマイト化は南極周辺海域で進んだ可能性が高く,この海域は基本的に酸化環境であると結論される. 特に,ウイルクスランド沖,およびデュモンデュルビル海のコアについては,古地磁気層序学に,数種類の岩石磁気特性を併用し,コア相互の対比が可能であることが明らかになった.さらにデュモンデュルビル海の3本のコアについては,過去70万年間に明確な数回の磁気特性の変動が見られた.磁気特性の変動は,南極大陸を起源とする堆積物の変化,すなわち氷床が運搬する堆積物の変化を表すので,これらの変動は氷床変動を表していると推定した. 今後の課題としては,上記の数回の岩石磁気特性の変動が,南極周辺海域全般でどれだけ確認できるかという点と,古生物学的手法(たとえば珪藻を用いたアイスアルジーに関する環境変動解析)を併用した,氷床変動の確認という点が上げられる.
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