Research Abstract |
平成18年度は,千葉県君津市と長野県上田市において野外地質調査を実施した.千葉県中部地域には新第三系の安房層群が広く分布し,そのうち天津層,清澄層,安野層を対象に調査を行って,地質図を作成しサンプリングを行った.長野県上田市北部には内村層・別所層に相当する中新統が分布し,それについて同様の調査を行った. さらに本研究課題の主要成果のひとつとして,古生物学会機関誌の化石に論文を投稿して受理された.この論文は過去約800万年間の日本海の古環境復元を試みたもので,後者は約1200〜700万年前の日本海と太平洋との群集比較から古環境を論じている.これにより,本研究の当初に計画していた後期中新世(約1200〜500万年前)の範囲を超えて,現在に至るまでの日本海の放散虫群集の長期的データを蓄えるとともに,放散虫ならではの古環境変遷史を示すことができた.ただし,過去500万年間については時間解像度が低いため,よりよい試料を入手して,分析を追加してゆく必要性があり,今後の課題といえる. また,平成15年度に長野県戸隠村付近で実施した地質調査に基づいた研究成果が出版された.このほかにも,4年間の本研究期間を通じて,新潟県,千葉県,北海道など各地の中新統・鮮新統の年代論についても膨大なデータが収集され,その結果は従来の地層の年代論・地層区分に改訂を迫るほどの内容があり,鋭意論文化に努めてゆきたい.しかし,裏を返せば,年代論が解決されなければ,その先の群集解析・古環境解析を実施するには及ばないことを意味しているのであって,早急な究明が待たれる.
|