Research Abstract |
知床半島地域の新第三系は、下位から上位へ,中新統忠類層,奥蘂別集塊岩層及び越川層と,鮮新統幾品層及び知布泊層に区分されている。 忠類層は,主に火砕岩からなり,下部と上部ではやや岩相が異なる。下部は,玄武岩質及び安山岩質火砕岩を主とし,砂岩泥岩互層及び溶岩を挟む。上部は,流紋岩質火砕岩からなり,流紋岩溶岩,泥岩などを挟む。火砕岩の多くが水冷破砕岩であることと,火砕物の水中での再堆積が顕著であることから,忠類層の火砕岩及び砕屑岩の多くは水中に堆積したと考えられている。ただし,流紋岩質火砕岩の一部が溶結凝灰岩であることから,忠類層には陸成層も含まれる。忠類層からは8.6±0.9Maのフィッショントラック年代(輿水・金,1986),武佐岳周辺に分布する忠類層相当層からは11〜7Ma前後のK-Ar年代(新エネルギー財団,1998)が報告されている。 奥蘂別集塊岩層は,玄武岩質〜デイサイト質溶岩及び火砕岩を主とし,硬質頁岩や凝灰質砂岩を挟む。火砕岩は水冷破砕岩を主とする。奥蘂別集塊岩層相当層とされるクテクンベツ川層からは8.25±0.53Ma及び6.09±0.71MaのK-Ar年代が報告されている(NEDO,2001)。 越川層は,主に硬質頁岩及び泥岩からなり,砂岩や火砕岩を伴う。この地層には,しばしば粗粒玄武岩が岩脈またはシート状に貫入している。越川層相当層の横牛川層及び忠類層に貫入している,この粗粒玄武岩と酷似した玄武岩からは5.7MaのK-Ar年代が報告されている(NEDO,1997)。 幾品層は主に凝灰質シルト岩からなり,その下部と上部はそれぞれ砂質シルト岩と細粒砂岩及び砂質シルト岩を主とし,しばしば軽石凝灰岩の薄層を挟む。下部の軽石凝灰岩からは5.1±0.4Maのフィッショントラック年代が報告されている(輿水ほか,1987)。 知布泊層は,砂岩及び泥岩を主とし,礫岩,含礫砂岩,亜炭などを挟む。この地層は,珪藻化石から,鮮新統と考えられている(嵯峨山,1987)。
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